日産自動車には「V-up」と呼ばれる業務改革活動があり、業務の様々な課題の解決に社員が自律的に取り組んでいる。この活動で最も重視されるのは、解決にどんな手法を使うかではなく、「適切な課題」を設定する点にあるという。

 コンサルティング会社のトップを長く務めた筆者は、課題を「論点」と言い換え、「最初に論点を間違えると、問題解決の作業をいくら正しくやっても意味のある結果は生まれない」と説く。当たり前のようだが、実際の社会には論点の間違いがあふれている。

 例えば少子化問題。筆者は「少子化とは現象であり、何を論点にするかで解決策は全く異なる」と指摘する。例えば生産年齢人口が減ることが論点なら、女性や高齢者などが働ける環境を整えるべきだし、若者の負担増加が論点なら、高齢者優遇を見直すといった対策を講じることが必要だ。

 本著では、適切な論点を発見して企業が抱える課題を解決するための手法を解説する。論点を分類して階層化するというコンサルタントらしい手法にも触れるが、現場を見たり、当事者や取引先などに話を聞いたりして本質的な論点を絞り込むプロセスがより興味深い。

論点思考

論点思考
内田 和成著
東洋経済新報社発行
1680円(税込)