アクセンチュア IFRSチーム
テクノロジー コンサルティング本部
財務・経営管理グループ マネジャー
橘 悟

[Question10]
IFRS(国際会計基準)で研究開発費の取り扱いが変わると聞きます。どのように変わるのでしょうか?

 IFRSを導入すると、研究開発費の取り扱い方が変更になります。ポイントは「一定の要件を満たす開発費は資産計上が求められる」ことです。

 日本基準では、研究開発活動に関する支出を発生した期に費用計上します。これに対しIFRSでは、研究開発活動を「研究局面」と「開発局面」に区分した上で、開発局面での支出について、一定の要件を満たす場合に無形資産として資産計上します。

 定期的に新しい商品を発売していたり、研究開発に巨大な金額を投資していたりする業界や企業では、総資産が大きく変動する可能性があります。

研究局面は費用、開発局面は資産または費用

 IFRSでは、研究局面と開発局面の区分を以下のように規定しています。研究局面では、基礎的な知識や技術の調査・探求を行うので、日本基準と同様にすべて費用処理となります。

 一方、開発局面では要件を満たすか否かにより、資産計上あるいは費用処理となります。開発局面における試作品の設計やテストは、製品化を見据えて行うからです()。

図●研究局面と開発局面の定義
図●研究局面と開発局面の定義

資産計上の対象となる開発費の要件

 では、どのような場合に開発費は資産計上されるのでしょうか。研究開発の結果として資産計上される開発費は、「自己創設の無形資産」として扱われます。IAS第38号「無形資産」では、以下の要件すべてを満たすものを自己創設の無形資産として規定しています。

  1. 技術的に実現可能である
  2. 無形資産を完成させ、使用または販売する意図がある
  3. 無形資産を使用し、販売する能力がある
  4. 無形資産を完成させ、使用または販売するための適切な技術的資源・財務的資源等の資源が入手できる
  5. 将来の経済的便益をもたらす可能性が高い
  6. 無形資産に帰属する支出を、信頼性をもって測定できる

 ちなみに、自己創設以外の一般的な無形資産としては、ソフトウエア、特許、著作権、顧客名簿などがあります。対価をもって外部から購入する、あるいは、企業結合に伴って取得するものが該当します。

 IAS第38号では、以下の要件をすべて満たすものを無形資産として規定されています。

  1. 物理的実態のない識別可能な非貨幣性資産である
  2. 過去の事象の結果として企業が支配している資源である
  3. 将来の経済的便益が企業へ流入することが期待される