英BTグループ パブリック&ガバメント・アフェアーズ部門
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ラリー・ストーン 英BTグループ パブリック&ガバメント・アフェアーズ部門
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 明るさが見えてきたとはいえ,世界の経済情勢は厳しい。企業は相変わらず効率性の向上を目指している。これは各国政府も例外ではない。

 英国政府は2010年に入って国家のICT戦略を公表した。政府・自治体のICTを改革することで,2013年度から約32億ポンド(約4600億円)の削減を目指すという取り組みだ。

 この戦略は,2009年末に英国政府が発表した「スマーター・ガバメント・プログラム」をベースにしている。同プログラムを通じて,政府や自治体業務をオンライン化して業務効率化を高めると同時に,デジタル・デバイドを無くそうという計画である。

 関連作業は,この4月から開始される予定だ。具体的には,(1)政府や自治体などの公共機関をつなぎ,公共サービスを提供する「政府クラウド」(G-クラウド)の構築,(2)現状数百に及ぶ政府系のデータ・センターを10~12カ所に削減,(3)オンラインでアプリケーションを販売・購入できる「政府アプリケーション・ストア」の設立,(4)地域ごとに異なっていた政府や自治体のパソコン仕様の統一といった取り組みが含まれる。

 このような政府業務の“クラウド化”は,英国政府が2009年初めに発表した「デジタル・ブリテン」という情報インフラ促進策があってこその取り組みだ。ブロードバンド基盤が整うことで,初めて市民が広く政府クラウドにアクセスできるようになるからだ。

“現場重視”でサービス向上

 スマーター・ガバメント・プログラムには副題がついている。それは「現場重視」(Putting the Frontline First)という言葉だ。

 政府システムをクラウド化することで,中央から地方に様々な行政サービスを移管し,現場サイドに決定権を拡大させる計画となっている。これによって行政サービスの効率と質の向上を図るのが狙いだ。当然中央の権限と業務は縮小される。この移行期間に政府の業務内容の見直しを行い,重複業務の排除や予算の見直しも計画している。地方分権である。

 もう一つ政府が掲げる重要な方針は,行政の透明性の向上である。政府が保有するデータはもちろん,各自治体が保有する様々な情報,高級官僚の報酬などまでを公開し,一般市民がアクセスできるようにする計画という。

 一般市民が直接データにアクセスできるようにすることで,これまで専門の職員が窓口で応対していた業務は減るだろう。これによってコストを節約できる。

 政府はこれらのプログラムにベンチマークの設定とレビューの実施を計画している。イノベーションに富んだアイデアも含まれており,とても興味深い取り組みになっている。ICTを駆使した新しい行政サービスの形として,他国も刺激を受けるだろう。

 もちろんBTにとってもスマーター・ガバメント・プログラムは見逃すことはできない。英国政府はBTの重要な顧客であるからだ。

ラリー・ストーン(Larry Stone)
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 先日ロンドンで,日本人の素晴らしい銀細工師,鈴木洋氏の講演を聞いた。彼は地球や風,火,水などをテーマとした作品を作っている。作品を一つ購入しようと思ったが,悲しいかな最も低価格の作品でも1万5000ポンド(約220万円)もするので,手を出せなかった。彼が将来,銀細工ではなく銅細工で作品を作ってくれるよう願っている。