ニフティの「ニフティクラウド」は、同社のインターネット接続サービス「@nifty」のインフラを、仮想サーバー単位で貸し出すサービスである。顧客は、ブログ・サービスの「@nifty ココログ」やニュース・サイトの「@nifty ニュース」など約160ある@niftyのサービスのインフラをそのまま、自社のシステム基盤として利用することができる。

 ニフティは、@niftyの余剰リソースを活用するためにクラウド事業に参入した。同社は2007年4月から仮想化技術を使って@niftyのサーバー統合を進めてきた。サーバー1台当たりの利用効率が高まったことで、空きのサーバーが増えたことがきっかけとなった。

 サーバー統合がひと段落した2008年、米Amazon Web Services LLCの「Amazon EC2」に続いて、グーグルが「Google App Engine」を開始。IT業界がクラウドに向けて動き出していたなかで、ニフティは余剰リソースの外販を検討し始める。

 ニフティが参考にしたのはAmazon EC2だった。Amazon EC2は、必要な時に必要なサーバー・リソースを提供する時間課金の提供形態で大きな注目を集めた。クレジット・カードによる決済手段を採用し、法人と個人に関係なく誰もが利用できるサービスとして提供していた。

 ニフティは提供形態こそAmazon EC2と同じ時間課金を採用したが、対象については法人向けに限定している。サーバー・リソースの空き状況が、1日の中でも昼夜で変動が大きかったからである。

 @niftyの各種サービスは個人会員を主な対象にしている。個人会員のほとんどは、仕事を終えて帰宅した夜間に@niftyの各種サービスを利用する傾向にあった。

 「空きリソースが増える昼間の時間帯は、ちょうど企業の業務時間帯と重なる。企業の業務システムのインフラとして、仮想サーバーのニーズがあるのではないかと考えた」。ニフティの林一司執行役員IT統括本部長は、ニフティクラウドを法人向けに限定した理由をこう説明する。

利用料は1時間当たり12円から

 ニフティクラウドの料金体系は、時間課金と月額課金の二つから選べる。最小構成の利用料は、1時間当たり12円、月額7500円となる。

 ニフティは、Amazon EC2を強く意識してニフティクラウドの提供形態や料金を設定したという。仮想サーバーを時間課金で提供する点はAmazon EC2と共通するが、料金水準はニフティクラウドの1時間当たり12円に対して、Amazon EC2は同7.905(1ドル=93円で換算)円。ニフティクラウドの方が水準としては割高だ。

 ニフティの林執行役員IT統括本部長は、「CPUの処理性能はAmazon EC2の約2.8倍、ネットワークの遅延はAmazonEC2の10分の1とニフティクラウドの方が高品質」と訴求する。

 ニフティクラウドの仮想サーバーは、最小構成で動作周波数1.0GHzのCPUを1コア実装する。「静的コンテンツを配信するWebサイトであれば、月間数百万アクセスに十分対応できる」。同社の上野貴也IT統括本部基盤システム部課長は、ニフティクラウドの処理性能について、こう説明する。

 ネットワークの遅延を抑えられるのは、クラウドを国内のデータ・センターで運用していることだけが理由ではない。500万人もの@nifty会員がストレスなく利用できる高速なバックボーンを利用できることも、遅延の解消に有利に働いている。

 Amazon EC2にはない信頼性も確保した。ニフティクラウドは、仮想サーバーの自動的な復旧機能を標準提供している。