日立製作所の「ビジネスPaaSソリューション」は、OSを実装した仮想サーバーを貸し出すサービスである。WebサーバーやDBサーバーなどのソフトウエアは、実装したOSに対応する製品を顧客が任意にインストールする。日立製作所のミドルウエア製品を月額課金で利用できるオプションもある。

 ビジネスPaaSソリューションの特徴は、同社のブレード・サーバー「BladeSymphony BS2000」を使って構築してあることだ。BladeSymphony BS2000は、同社が独自開発したサーバー仮想化機能「Virtage」を実装している。ビジネスPaaSソリューションの仮想環境も、このVirtageを使って構築したものである。

 「Virtageはハードウエアを透過的に利用できるように仮想環境を構築する。一般的な仮想化ソフトに比べてパフォーマンスを高められる」。日立製作所の小川秀樹プラットフォームソリューション事業部企画本部事業戦略部担当部長は、Virtageの特徴について、こう説明する。

 Virtageは、CPUのコア、ネットワークのインタフェース、メモリーやストレージの領域といったリソースを論理的に分割して、仮想サーバーを設定する。各種リソースを仮想サーバーごとに独立して確保できるため、物理的に独立したサーバーと同じ使い勝手で利用できる。サーバー本来のパフォーマンスを引き出せる。ある仮想サーバーで生じた障害が、他の仮想サーバーに影響することはない()。

図●仮想化機能「Virtage」の主な特徴
図●仮想化機能「Virtage」の主な特徴
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 一般的な仮想化ソフトは、仮想化ソフトやホストOSが各種リソースの配分をエミュレーションする仕組みになっている。このエミュレーションの処理がボトルネックとなって、全体のパフォーマンスが低下したり、障害の影響が正常に稼働している仮想サーバーにまで及んだりする可能性があると、日立製作所は指摘する。

 仮想サーバーに割り当てるリソースを固定できることも、他社の仮想化ソフトにはないVirtageならではの特徴だ。ビジネスPaaSソリューションでは、この機能を活用したオプション「リソースキャパシティ保証サービス」を用意している。他の仮想サーバーの稼働状況に左右されず、常に一定のリソースを確保したい業務アプリケーションに向く。

 このほかVirtageが他社の仮想化ソフトと差異化しているのは、サーバーの時刻と仮想サーバーの時刻を高精度に同期できる機能を持つことだ。他社の仮想化ソフトではエミュレーションの処理が加わるため、サーバーと仮想サーバーの時刻のずれが生じやすいが、補正機能はないという。

 「Virtageを使えば仮想環境でも基幹業務システムを利用できる。積極的に提案していきたい」。日立製作所の小川担当部長は、ビジネスPaaSソリューションの用途についてこう話す。

 日立製作所は、個別案件の中でビジネスPaaSソリューションを組み合わせて提案していく。例えばコストを重視する顧客に対しては、自前のサーバーを調達する代わりにビジネスPaaSソリューションを使い、構築コストを抑えるといった提案が考えられる。

 個別案件の中で提案していくため、顧客は日立製作所の担当者を通じてクラウドの利用を申し込むことになる。米Amazon Web Services LLCの「Amazon EC2」やグーグルの「Google App Engine」のように、Webで申し込める仕組みにはなっていない。

 システム構成やリソース配分も日立製作所の営業担当者と打ち合わせて決める。利用開始に必要な設定は、すべて日立製作所が代行する。導入後にシステム構成やリソースを変更する際にも、同社の担当者に申請して変更作業を依頼する。