総務省は2010年4月19日、2011年度~2013年度における無線局の免許人が負担する電波利用料について検討する「電波利用料制度に関する専門調査会」の第1回会合を開催した。検討項目は、電波監視や電波監理システムの構築・運用、地上デジタル放送への円滑移行環境整備といった「電波利用料の使途」、2008年度~2010年度で年平均680億円である「電波利用料の予算規模」、無線局の種類や規模で定められている「電波利用料の料額」の三つである。

 料額の算定において考慮すべき論点として「放送事業者などの負担軽減措置の扱い」「電波の経済的価値を一層反映させる方策」「地上デジタル放送移行後の空き周波数利用における負担の扱い」「ホワイトスペース活用における新たな地域メディアの負担の扱い」の4点を具体的に示した。放送事業者の負担額については、調査会の冒頭で内藤正光副大臣が「放送事業者負担額は公共性の観点から抑えられているが、この点についても議論してほしい」と要望している。

 電波利用料は大きく周波数の使用帯域幅および出力によって決まる負担額と、無線局数で均等に割って決定する負担額の二つからなる。前者は基準を満たすことで軽減措置が受けられる。例えば放送事業者は放送法で定められた内容が「ユニバーサル・サービスまたはこれに準じた責務などが法令などで規定されている」「国民の生命、身体の安全および財産の保護に寄与するもの」という二つの基準を満たしていることを理由にする形で1/4(各基準の係数1/2の2乗)となっている。このため、電波利用料全体に占める割合は2010年度で2.8%と比較的小さい。アナアナ変換の追加負担4.5%を加えても7.3%である。比較されることが多い携帯電話事業者およびそのユーザーが支払う電波利用料額の割合は、10倍の73.8%となっている。

 構成員である早稲田大学 国際学術院アジア太平洋研究科 教授の三友仁志氏が調査会の場で、「放送事業者と携帯電話事業者の負担額の関係にはフラストレーションがある」と語ったように、この不均衡を指摘する声が以前からある。ただし、電波利用料についての最終決定を行う政務三役の一人である内藤副大臣は副大臣会見後のカコミ取材の場で、「テレビやラジオの放送事業は公共性が非常に高い。電波利用料の負担額を増やすのは難しいのではないか」と述べている。

 電波の経済的価値を一層反映させる方策には、電波オークションがある。調査会の場で野村総合研究所 上席コンサルタントの北俊一氏から「調査会の場で電波オークションの取り扱いについて議論するのか」という質問があった。これに対して内藤副大臣は「民主党の政策集であるINDEX2009でも、電波オークションが掲げられている。電波の経済的価値を反映させる方法としてオークション制度の導入可能性を検討してほしい」と述べ、調査会の場で検討することが確認された。

 ただし座長である中央大学研究開発機構 教授の土居範久氏は、「過去にも電波オークションの議論をしている経緯がある。まずは過去の総務省の会合における電波オークションの検討内容を調べるべきだ」と述べ、次回以降の調査会において資料を提出するよう総務省に要望した。

 地上デジタル放送移行後の空き周波数またはホワイトスペースを利用する場合の電波利用料について、内藤副大臣は調査会の終了後などで、「地域の情報発信とビジネスに使うものは分けて考える必要がある」「公共性の高いものは配慮が必要」という考えを示している。

 今後のスケジュールは2010年5月から6月にかけて、ヒアリングを実施する。現在電波を利用している免許人だけでなく、ホワイトスペースの利用を希望している事業者なども招集して意見を述べてもらう。その後2010年7月末までに方向性を固め、2010年8月末までに基本方針を決定する予定である。