アクセンチュア IFRSチーム
テクノロジー コンサルティング本部
コンサルタント
深見 知子
IFRS(国際会計基準)対応プロジェクトでは、まず何をするべきでしょうか。
IFRSに対応するためのプロジェクトは、大きく(1)影響分析・計画、(2)構築、(3)運用・保守という三つのフェーズで進めていきます(図1)。

IFRS対応の際に、まず実行する必要があるのは(1)の影響分析・計画です。ここで影響分析を実施し、対応作業の計画を策定します。IFRS対応の目的や道筋を決める非常に重要な作業です。
影響分析・計画フェーズは、i)影響分析、ii)対応施策の検討、iii)グランドデザインの策定、iv)ロードマップの策定、という順序で進めます。
影響分析:システム部門の早期参加が重要
影響分析ではまず、会計基準について日本基準とIFRSの基準の差異を整理します。その上で、会計処理や開示の方法といった制度面における自社への影響を検証、理解していきます。
次に、影響を検証した結果を踏まえて、業務プロセスや情報システムでどのような対応が必要になるかを整理します。通常は、会計基準の差異を一覧できるようにして、それぞれの差異について制度や業務、システムなど企業インフラにおける影響を確認、整理するという流れを採ります。
続いて制度面の変更により、企業の財務情報がどの程度影響を受けるのかをシミュレーションします。企業にとって、この作業はとても重要です。シミュレーションの結果をもとに、必要な対応施策や対応時期に関する判断を下すからです。
影響分析は多くの場合、経理部門が主体となって実施します。ただ、システム部門をできるだけ早期に巻き込むことが必要になります。システムへの影響は非常に大きいからです
対応施策の検討:包括的な視点で臨む
影響分析が終わったら、対応施策を検討します。ここでは、IFRSによる会計制度の変更への対応に加えて、経営改革のための施策を検討する必要があります。IFRS対応の本質として、原則主義のもとで、会計処理や開示の方法の背景にある「経営モデル」が問われるからです。
経営モデルとは例えば、「グローバルなハイパフォーマンス企業として、グループ全体で業務プロセスおよび勘定科目・製品・顧客などの主要コード体系を標準化し、業績予想/見直しを月次サイクルで実行できる」というような、経営方針・オペレーションに関するモデルを指します。
対応施策を検討する際は、制度面だけでなく、業務プロセス、システム、組織・人材など、企業インフラにかかわる包括的な視点を持つことが必要です(図2)。

これらの視点で「目指すべき経営モデル」の実現を目標とした対応施策を検討し、「IFRS対応+経営改革」を進めていくことになります。