フィリピンと台湾の間の台湾沖は,海底地震が頻発するエリアである。通信業界ではこの地域は,日本や米国と,東南アジア各国間を結ぶ海底ケーブルが集中するルートであり,地震や台風の影響で断線事故が生じやすいことでも有名だ。2010年3月4日の16時(日本時間)ころにも,地震の影響で複数の海底ケーブルに障害が発生し,日本からアジア地域への国際データ通信や国際電話,インターネットなどが使いにくくなった。

 日本の通信事業者は,このルートが不通になると,グアムを経由する太平洋ルート,または中国の陸地を経由する大陸ルートの2経路を使って,既存ユーザーのトラフィックをう回し,サービスを復旧させる。今回,すべてのサービスが通常通りに回復したとの最終報を出したタイミングは,NTTコミュニケーションズ(NTTコム)が3月6日,KDDIが3月7日だった。

 NTTコムの関係者は,「これで対KDDIは3連勝だ」と喜色を隠さない。過去にさかのぼると,2006年12月の大規模地震では,NTTコムが1月中旬,KDDIが2月初旬に完全復旧したと報告した。その次は,2009年8月中旬の地震。この時も国際データ通信で見ると,NTTコムが8月14日に完全復旧。KDDIの完全復旧は8月19日だった。

 NTTコムが先んじた背景には,自社で保有するう回路だけでなく,海外事業者からも帯域を調達できたことがあるようだ。「各国の事業者と定期的に品質管理の方法について議論している。いざという時には,こうした仲間と助け合う」という。
 事故は起こらないのが最善だが,自然災害は避けられない。ユーザーにとっては復旧の早さが重要だ。KDDIが今後どう巻き返すか,注目したい。