井上隆仁・経営戦略本部情報システム部ジェネラルマネージャー
井上隆仁・経営戦略本部情報システム部ジェネラルマネージャー
[画像のクリックで拡大表示]

 広島県福山市に本社を置く食品トレー・弁当容器最大手の化学メーカー、エフピコは知る人ぞ知る優良企業だ。2009年度の第1~第3四半期に当たる4~12月の売上高は974億8100万円(前年同期比3.2%減)、営業利益は104億1300万円(同34.3%増)と、不況をものともせず増益を果たした。売上高営業利益率は10.7%と高い。

 同社の主力商品はスーパーやコンビニエンスストアでよく見かける精肉・鮮魚や総菜用のプラスチックトレーである。この分野でトップの国内シェア26%(同社調べ)を確保しているとはいえ、プラスチックトレーの単価は1~10円程度。素材と金型があれば比較的簡単な工程で製造できるものだけに、「差異化が難しい薄利商品」とみなすのが常識的な見方だろう。

 それにもかかわらず高い利益率を維持できている最大の理由は、「情報を活かす組織」の確立だ(関連記事1)。佐藤守正代表取締役社長は、独SAP社のERP(統合基幹業務)パッケージ導入や、IT(情報技術)を活用した需要予測の強化などを陣頭指揮した(関連記事2)。

 同社のCIO(最高情報責任者)に当たる井上隆仁・経営戦略本部情報システム部ジェネラルマネージャーはこれを実務面で推進してきた。「当社の場合、ITで需要予測をしようとしても限界があるが、市場動向を先読みしてお客様への提案を強化するところでITを活用できる」(井上氏)という。2008年4月に最新の分析システムを導入(関連記事3)するなど、市場動向を把握するためのシステムには継続的に投資してきた。

小売店でのトレーの使われ方や盛りつけ方などをデータベース化

 特徴的なのが情報の集め方だ。営業担当者は顧客であるスーパーやコンビニエンスストアなどを回って、エフピコ製トレーが使われている肉や総菜などを買い集める。そしてトレーの品番や、トレーに載せられている肉・野菜などの種類、売価、盛りつけ方の写真などを社内データベース「売れNavi(ナビ)」に入力する。多い時で月間1000件以上の情報が集まる。

 この情報を分析すると、例えば「節約志向の高まりで弁当の単価が298円に下落している」などの事実が分かる。さらにデータを地域別や小売店別、食品の種類別など様々な切り口でも分析することで、「消費が低迷するなかでも節分の恵方巻など季節商品は一定数売れそうだ」「小売業は売場効率に敏感になっていて、陳列しやすいトレーのニーズが強い」といった市場動向も浮き彫りにする。このように販売実績データだけでなく、トレーが小売店の店頭でどう使われているかに関する情報までも蓄積して分析し、より付加価値が高いトレーの販売に生かす情報活用体制を確立したのが同社の強みだ。

Profile of CIO
◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
・ごく当たり前のことですが、ユーザーの立場に立って要求・要件を理解した、心に刺さる提案を望みます

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞
・中国新聞
日経情報ストラテジー
・DIME

◆最近読んだお薦めの本
・『ダメな”システム屋”にだまされるな!』(佐藤治夫著、日経BP社)
・『頭のいい説明「すぐできる」コツ~今日、結果が出る!』(鶴野充茂著、三笠書房)

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー、学会など
・ITベンダーや監査法人などが主催するユーザー会やセミナーに出向くようにしています

◆ストレス解消法
・ゴルフ(やりながらストレスを溜め込む一方ですが)