星 暁雄=コモンズ・メディア

 2010年4月17日に開催されたAndroid開発者イベント「Android Developers Forum in Tokyo」(主催 日経BP社 ITpro、Android Application Award事務局、日経BPセミナー事業センター、特別協賛 NTTドコモ、特別協力 ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ、日本Androidの会、関連記事)では、Android開発者たちに向け、「少し先の未来」について多くの発言があった。

写真●Android Developers Forum in Tokyoの会場
撮影:中根祥文

 最も重要なのは「スマートフォンの時代は何かが抜本的に変わる」ことだ。変わるベクトル、内容、受け止め方は人それぞれだろうが、とにかく抜本的に変わる。

NTTドコモ山下氏が語る、「スマートフォンの時代で抜本的に変わるもの」

写真●NTTドコモ スマートフォン事業推進室 アプリケーション企画 担当部長 山下哲也氏
撮影:中根祥文

 NTTドコモ スマートフォン事業推進室 アプリケーション企画 担当部長 山下哲也氏のプレゼンテーションでは、NTTドコモという所属企業のサービス紹介、製品紹介だけでなく、スマートフォンという「今までとは違う何者か」で、何が起こるのか、そして開発者に何を期待するのか、という点を前面に押し出していた。

 「携帯電話事業者の一員」という立場での発言だけでなく、スマートフォンの時代に起きることを端的に伝えようとした講演だったように思えた。どのように変わるのか。山下氏が示した言葉を手がかりに見てみよう。

 まず「デバイスが多様化、高度化、モバイル化」(山下氏)する。電話やパソコンという従来からあるデバイスの範囲を超え、常時電源が入り、常時インターネットに接続し、利用者の手元で使われる、新たな情報流通の窓口が誕生する。

 「ユーザーインタフェース(UI)が決定的に違う。マウスとキーボードから、より直感的なUIへ。それが常に日常に密着。常にオンになる。ここに視点を据える」(山下氏)。

 それに伴い、デジタルによってメディアの構造が変わる。この変化のポイントをつかむ必要がある。重要となるキーワードは「世界規模のコミュニケーション」だ。Twitter、Facebookなど巨大なユーザー数を抱え、コミュニケーションを促進するアーキテクチャを内在するインターネットサービスは、今や世界中の人々を結ぶコミュニケーションのプラットフォームとなっている。

 「Evernote、TuneWiki、フリーミアムで普及するアプリケーション」を山下氏は新たな動きとしてあげる。無償で配布しているのに、仕事のスタイル、生活のスタイルを変えてしまうようなインパクトを持ったアプリケーションが登場している。無料アプリケーションの大量配布により可能となった、新たなビジネスも登場している。

 「僕のアイデア、君のアイデアを組み合わせよう」(山下氏)。Androidでは、インテント(共有)や、WebAPIなどの利用によって、複数のアプリケーションやサービスを組み合わせて新たな付加価値を提供することが容易だ。このような枠組みの中から、新たなアイデアが登場するだろう。

 そしてプレゼンテーションの最後に、山下氏が「開発者への期待」としてあげた3項目は、シンプルだが重要な内容を含んでいた。

 1番目は「サービスのアプリ化」。スタンドアロンのアプリ、例えば電卓や備忘録はそれだけで完結している。だが、生活習慣に取り入れられ、ライフスタイルの中で使われ続けるサービスを作り出せれば、より価値が大きなものとなる。そうした視点でアプリを作ってほしい、と期待を述べた。

 2番目は「オープンな相互連携」。前述のように、Androidアプリは相互連携がポイントとなる。自分たちのアプリケーション内に閉じるのではなく、相互連携の可能性を広める方向で発想してほしい、と山下氏は語った。

 3番目は「デザイン」。見た目だけでなく、使いやすさが重要となる。また、利用者に密着して使われるスマートフォンでは、五感に訴えるUIの可能性も出てくるだろう。UI、色、音、形のバランスが求められる。

 このように、NTTドコモのサービス(例えばドコモマーケット)や、新機種(例えばXperia)、さらにはAndroidという枠組みも超えて、山下氏は「スマートフォンがもたらす未来」に向けて、開発者に期待するものを語った。