開発者の視点からiPhoneとAndroidを比較する連載の第6回。今回は、市場としてのiPhoneとAndroidを比較する。ミック経済研究所によれば、2010年度、iPhoneの販売台数の伸びは前年対比で11.4%増の156万台と減速し、国内スマートフォン市場(PHSベースのスマートフォン含む)でのシェアは32.8%と落ち込むと推測される。Androidスマートフォンは前年対比300%の販売台数96万台、国内シェアも20.2%と2009年度の2倍近く拡大すると予想される。


山崎 貴司/ミック経済研究所 調査第二部 研究員

 2008年度、日本のスマートフォン市場はれい明期にあった。ごく一部のITリテラシーの高いユーザーや、ビジネスでの利用が大半であり、出荷台数も138万台にとどまった。

 しかし2009年度に入り、「iPhone 3GS」の発売とともにスマートフォンの認知度が向上。国内スマートフォン市場は前年対比219%の高成長を遂げ、302万台となった。

 2010年度はスマートフォンがさらに浸透する。日本国内でのスマートフォンの販売台数(PHSベースのスマートフォン含む)は前年対比57.5%増の475万台に達すると見込まれる。

2009年に高成長したiPhone、対抗勢力になれなかったHT-03A

 iPhoneは、2008年度は市場での認知度がまだ低く、出荷台数25万台、シェアは18.1%であった。

 しかし2009年度に入り、2008年7月に発売されたiPhone 3GSは日本市場で大きな話題となった。また、ソフトバンクモバイルの「iPhone for everybodyキャンペーン」が効を奏し、前年対比560%と大幅に成長。販売台数は140万台に達した。iPhoneのシェアは2009年度に、46.4%と半数近くを占めた(図1)。

 一方Android搭載端末(以下Android)は、日本では2009年7月に初めて、NTTドコモから発売された。台湾スマートフォン大手HTC(以下HTC)製の「HT-03A」である。NTTドコモは「HT-03A」のきょう体のデザイン性や操作性の高さよりも、Googleの提供するGmailや検索サービスなど、Google携帯として訴求した。

 欧州で人気をはくした「Magic」をベースにした「HT-03A」だったが、HTCとしての日本市場でのブランド力がまだ低いことなどから、iPhoneの対抗勢力になるほどのインパクトは持ち得なかった。2009年度の出荷台数は32万台、シェア10.6%にとどまった。

図1●日本国内市場スマートフォン向けOSシェア推移 2008年度から2010年度(PHSベースのスマートフォン含む)
図1●日本国内市場スマートフォン向けOSシェア推移 2008年度から2010年度(PHSベースのスマートフォン含む)
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本調査におけるスマートフォンとは、Symbian OS、Windows Mobile、Androidなどの汎用OSを搭載した、オープン環境で使用可能な音声およびデータ通信が可能な端末を指す。

 Symbian OSを搭載したスマートフォンとしては、ソフトバンクモバイルから2007年1月に発売された「705NK (ベース端末は、Nokia N73)」や2008年4月に発売された「X02NK(同Nokia N95)」などがあったが、Nokiaは2008年12月に日本市場から撤退。2009年度からはSymbian OS搭載スマートフォンの実績がない状態となっている。