宮原 徹
日本仮想化技術

 既存の物理環境における必要リソース量の把握が完了したら、次はいよいよ移行先となる仮想化環境のシステム構成を具体的に検討していく。ここでシステム構成をしっかり検討できれば、省電力化のシミュレーションも容易である。

CPU構成の検討

 CPUはクロック数によって価格が大きく変わるが、仮想マシン1台1台に高いクロック性能が要求されない場合、低いクロック数のCPUを多く用意すると、性能的に最も最適化できる。なぜなら、仮想マシンに割り当てられた1個の仮想CPUは、必ず1個の物理CPUに対応づけられるためだ。物理CPU数が多ければ同時に多くの仮想マシンの処理が行えるため、待たされることがない。

 また、次回に詳しく紹介するが、消費電力を抑えるという点でもクロック数よりCPU数が重要になる。低消費電力型のCPUはクロック数が低いが、同じクロック数の通常CPUよりも消費電力が低い。まず低消費電力型のCPUを検討し、クロック数が足りない場合に通常型を検討するとよい。

 ここではIntelの低消費電力型CPU「Xeon L5520」を使って構成してみよう。クロック数は2.26GHzで4コア型のCPUである。2プロセッサ搭載した場合の1台あたりの合計クロック数は、

2.26GHz×8=18.08GHz

となる。

 前回見積もったように、CPUリソースとして合計27GHzが必要だったので、60%ルールを適用した場合でも、この構成の仮想マシン・ホストが3台あればよい。

18.08GHz×3台×60%=32.544GHz

 30台分の物理環境を3台の仮想化ホストでサポートできる(表1)。

表1●CPU構成の検討
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表1●CPU構成の検討

メモリー構成の検討

 仮想化ホストにはメモリーをできるだけ多く積みたいが、メモリー・スロット数がネックになる。必要なリソース量をできるだけ大容量のメモリー・モジュールで用意しよう。2Gバイトや4Gバイトのメモリー・モジュールと比べ、8Gバイトのメモリー・モジュールはかなり割高である。

 この場合、効率良くメモリー・スロットを使って搭載メモリー量を多くするには4Gバイトのメモリー・モジュールがよいだろう。サーバー1台当たりのメモリー搭載量は、以前は合計8Gバイト程度だった。最近ではメモリーが安くなったこともあり、16G~32Gバイトが当たり前になりつつある。

 また、Intel Xeon 5500番台では、メモリーのチャネルが2本から3本に変わり、性能を最適化するにはメモリー・モジュールを3枚単位で増設する必要がある。このためメモリー容量が6Gや12Gの倍数、つまり24Gや48Gといった見慣れない数字になる。

 CPUの構成で、仮想マシン・ホストは3台という数値が出たので、メモリーも3台分を検討する。必要なメモリー量は合計60Gバイトだが、60%ルールを適用すると約1.5倍の90Gバイト程度が必要になる。1台当たり30Gバイトなので、実際にはサーバー当たり36Gバイトを搭載することになる。

36Gバイト×3台×60%
=64.8Gバイト(必要量に対し+4.8Gバイト)

 ただし、前述した通り、Intel Xeon 5500番台の場合、性能最適値は4Gバイト×12枚搭載の48Gバイトとなる。48Gバイト搭載であればメモリー容量は十分だが、24Gバイトだとやや足りない。

48Gバイト×3台×60%
=86.4Gバイト(必要量に対し+26.4Gバイト)

24Gバイト×3台×60%
=43.2Gバイト(必要量に対し-16.8Gバイト)

 少しでも導入コストを下げたいのであれば24Gバイト構成を選択し、各仮想マシンの使用しているメモリーを切り詰めることも可能だが、あまりおすすめできない。余裕があれば、将来に新たな仮想マシンを追加したり、性能が芳しくない場合に仮想マシンへメモリーを追加で割り当てたりすることも考えて、多めに搭載するとよい(表2)。

表2●メモリー構成の検討
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表2●メモリー構成の検討

◇      ◇      ◇

 次回は、ネットワークとストレージの構成を検討する。また、消費電力についても、仮想化による削減効果を検証する。