アクセンチュア IFRSチーム
テクノロジー コンサルティング本部
コンサルタント
深見 知子
IFRSが適用されると連結対象の会社が増えると聞きます。なぜでしょうか?
IFRS(国際会計基準)も現在の日本の会計基準も、連結対象の考え方として「実質支配力基準」を採用している点は同じです。ただし、日本基準では連結を除外できる規定を記載しているのに対し、IFRSにはそのような規定が存在しません。このため、IFRSのほうが連結の範囲は広がることとなります。
加えて、日本基準は実質基準でありながら、具体的に判断する際は持ち株比率を一つの目安とする規定となっています。IFRSにはこのような規定がありません。この点でも、IFRSのほうが連結対象の範囲が広がる可能性が高いといえます(図)。

親会社は子会社を「支配している」
IFRSの連結対象範囲は、IAS第27号の「連結・個別財務諸表の規定」により定められています(IASの全体像については、「Q2 IFRSは全体として、どのような体系なのか?」を参照)。
連結財務諸表は、親会社・国内および海外子会社・関連会社の集合体を一つの企業体としてとらえて作成される財務諸表のことです。親会社はIAS第27号の規定に準拠し、すべての子会社への投資を連結した財務諸表を作成・表示する必要があります。
また親会社は、子会社を「支配していること」と位置付けられています。ここでいう支配とは、企業がその活動から便益を得るために財務・業務方針を統制する力が存在することを指します。
ある企業の議決権の過半数を直接的/間接的にかかわらず所有している場合には、すべて、IAS第27号の定める支配力を有することになります。議決権が過半数に満たない場合でも、以下の場合には支配が存在するとされます。
- ほかの投資企業(投資家)と合意の上、議決権の過半数を有する
- 法令や契約により、企業の財務/経営方針に影響を与える力を有する
- 取締役会もしくは同等の機関において過半数の取締役を選任・解任する権利を有する
- 取締役会もしくは同等の機関において議決権の過半数を行使する権利を有する
IFRSでは支配力解釈の例外規定を認めていない
冒頭で触れたように、日本の連結対象の考え方もIFRSと同じ実質支配力基準です。ところが、上記IAS27号で規定している連結対象と日本基準の間には、決定的な違いが存在します。
日本基準では、支配が一時的である子会社や、連結対象に含むことで投資家の判断を著しく誤らせる可能性がある企業は、連結対象から除外できます。さらに子会社と判断できる場合でも、ベンチャーキャピタルや特定目的事業体(SPE)などのうち、一定の条件にあてはまる場合は連結対象外とする例外規定が設けられています。
IFRSは、このような例外を基本的に認めておらず、支配力を有すると判断されたすべての企業を連結対象とする必要があります。結果として、IFRS適用後は今まで連結財務報告書に記載していなかった企業も連結対象子会社となり、親会社に対してIFRSベースでの財務報告義務を負うようになるなど、子会社側にも大きな変化が出てくることになります。
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