宮原 徹
日本仮想化技術

 サーバー仮想化の目的として「仮想化によるサーバー統合(仮想化統合)」がよく挙げられる。物理サーバーのリース期間が終了したり、保守サービス期間が終わって交換用部品が入手できなったりするなどで、システムを継続運用するのが困難な場合に採用することが多い。

 これにより、サーバーの消費電力削減や設置スペース縮小などによるランニング・コストの削減も期待できる。省電力化を図る「グリーンIT」にも貢献するわけだ。

 しかし、仮想化統合を成功させるには、きちんとした仮想化環境の設計が必要になる。VMwareやXen、Hyper-Vといった仮想化ソフトウエアが稼働するだけでなく、適切な性能で既存システムを動かし、さらに消費電力を確実に削減できるようにするべきである。

 ここでは、当社がこれまで手掛けてきた仮想化プロジェクトに基づいて、消費電力の削減までを考慮したサーバー仮想化環境を設計する際の流れを解説する。前半は既存のシステム環境に対する現状把握が中心となるが、その基礎データがあれば仮想化環境のシステム構成する段階で、省電力化のシミュレーションが容易になる。

物理環境から仮想化環境のリソースを推定

 まず、仮想化環境におけるリソース量の基本的な考え方について解説しよう。

 物理環境では稼働OSは一つで、ハードウエア・リソース(つまりCPUやメモリー、ストレージやネットワークなどの各種I/O)はそのOS環境が独占して利用できる。これに対して、仮想化環境では1台のハードウエア上で複数のOS環境が動作し、リソースを共有して利用する。最近ではCPUもマルチコア化し、メモリー容量も増加している。一つのハードウエアきょう体内で複数のOS環境をより容易に動作させられるようになってきた。

 しかし、仮想化環境でも仮想マシン内のOS環境が物理的なハードウエア・リソース量を超えて利用すると問題が出ることは同じである。その制約条件は以下の式で表せる。

ハードウエアのリソース量 ≧ 複数OS環境の合計リソース量

 仮想化環境の設計では、この式が成り立つようにハードウエア・リソースを見積もっていく。具体的には、「移行前の物理環境のリソース量の事前調査」によって「移行後の仮想化環境のリソース量の見積もり」を行い、続いて「仮想化に伴う性能劣化の見積もり」を実施する。それらを総合的に考慮して、上記の式が成り立つようなハードウエアを選定する。

 ただし、リソースにはCPUやメモリーなどさまざまな種類があり、それぞれでリソース量の考え方が異なる。一つひとつ説明していこう。