サーバー仮想化は「省電力化」に大きな効果を発揮する。グリーンITの実現はもちろん、電気代の削減や熱対策にも有効だ。では、そんなグリーンな仮想化環境を設計するには、どうすればよいのか。そのポイントはサーバーリソースの「3つのムダ」を削減することにあると、日本仮想化技術の宮原徹氏(代表取締役社長兼CEO)は指摘する。(聞き手は渡辺 享靖=ITpro)

仮想化技術はサーバーの省電力化に有効とされている。実際には、どのような取り組みをするのか。

 特別な取り組みは必要ないが、省電力化を意識した設計が重要になる。基本的には、仮想化によって「サーバーを集約する」→「サーバーの台数が減るから消費電力や発熱量が減る」→「それがさらに空調(サーバーの冷却)コストを減らす」という道筋をきちんとたどればよい。その過程で「リソースのムダをなくす」という意識を持っていれば、サーバーの消費電力を数分の1に削減することもできる。

 単に電気代を節約できるだけではない。古いデータセンターだと1台のラックに供給できる電力が限られている。それゆえに「ラックがあいているのにサーバーを入れられない」という問題にも、仮想化が効く。サーバーの集約により、ラック1台あたりのアプリケーション稼働数を増やせるため、必要なラックの数を削減できるからだ。データセンターでラックを借りているのであれば場所代が減る。良いことづくめなので、「消費電力を減らす」という設計思想は理にかなっている。

リソースのムダ(1)使ってなくても電力を消費するサーバー本体

グリーンな仮想化環境を構築するためのポイントは何か。

 まず、サーバーの消費電力にはムダが非常に多い。たとえば消費電力200Wのサーバーは基本的に、処理量が0%でも100%でも、消費電力は200W前後であまり変わらない。実態としてサーバー(CPU)利用率は20~30%とされているが、これを60%くらいまで高めれば、電力のムダが半減する。仮想化によりサーバーの集約率を高めれば、難なく実現できるだろう。

 仮に30台のサーバーがあり、1台当たりの実際の消費電力が300Wくらいだったとして、それを仮想化技術により3台にまで集約すれば、消費電力を7分の1くらいにまで削減できるのではないか。電気料金に換算すると、年間およそ163万円の削減につながる(詳細は次回以降を参照)。最新の8コアプロセッサとか12コアプロセッサを使えば、もっと集約度を高めて、もっと省電力化を進められる。

単純なサーバー集約だけでも、大きな省電力効果が得られるということか。

 その通り。仮想化していないサーバーに、いかにムダが多いかがお分かりだろう。

 これまでは、よほどのことがない限り、設計者が消費電力を気にすることはなかった。前述したような「ラックの供給電力の制限により、ラックがあいているのにサーバーを入れられない」といった問題を抱えていない限り、設計者は消費電力を意識することはなかったと思う。

 実際にサーバーの消費電力を計測してみれば、それを実感できるだろう。仮想化することで省電力化はできるが、今使っているハードがどのくらい電力を消費しているのか、まずはそこに目を向けることが重要である。電源コンセントに差し込んで消費電力を計測する装置がいろいろある。添付ソフトウエアで消費電力量のログが取得できるものもある。

リソースのムダ(2)少しのデータ量でもディスクは常に回転

 サーバー本体の集約に続いて、次はサーバー本体の「ディスクレス化」を検討してもらいたい。CPUやメモリーだけでなく、ハードディスクも含めたシステム全体で集約化を考えていけば、消費電力はぐっと減る。われわれがサーバーを省電力化していくときには、サーバーをディスクレス化して、データを共有ディスクに集約する。

 従来は、サーバーマシンごとにハードディスクを冗長化して搭載していることが多かった。ブレードサーバーでも、OSの起動用ディスクを内蔵していたりする。しかし、その中身を見ると、ディスクの利用率がかなり低いのではないか。CPU利用率と同様で、将来の処理量(データ量)の増加を見越して、容量の大きいディスクを入れたため、全体の20~30%しか使っていないケースがある。