日本語圏のAndroid搭載スマートフォン利用者にとって、最も知名度が高いアプリケーションの一つが日本語入力ソフトSimejiである(写真1、写真2、写真3)。日本で発売されるAndroid搭載スマートフォンには日本語入力ソフトがあらかじめインストールされているが、それにもかかわらず“草の根”のソフトであるSimejiの人気は高い。Android Marketの表示によれば、記事執筆時点で5万~20万ダウンロードという実績を持つ。

写真1●Simejiを利用中の画面
フリック入力と予測変換を組み合わせ、日本語を素早く入力できる
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写真2●顔文字の入力も可能
「SYM」キー長押しの後「顔」キーを選択すると、顔文字を入力できる
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写真3●横位置での入力画面
縦位置でフリック入力を指定した場合、横位置ではローマ字入力となる。画面の横幅いっぱいのキーボードで入力できる
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 Simejiの魅力はいくつもある。iPhoneでおなじみ「フリック入力」への対応など入力方法の種類が豊富なこと(写真4、5)。機能追加やバグ修正が非常に頻繁で、活発にアップデートされていること。日本語入力以外に、「マッシュルーム」や「モーションランチャー」など独特の機能を備えており、「遊べるソフト」としての要素を持っていること。

写真4●ガイド付きのフリック入力
フリック入力で、「シンプルなキートップ」かつ「フリックガイドを表示」に設定した。キーをタップすると、このようにガイドを表示する
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写真5●多彩な入力方法をサポート
フリック入力のほか、ポケベル方式、ケータイ方式、フルキーボードと日本語入力で考えられる各種方式を網羅している
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 Simejiは、実用性と遊びの要素の両方を兼ね備えた、希有なソフトなのである。

 Simejiの作者であるadamrocker氏の本業は、ソフトウエア研究者である。Simejiは余暇を使って開発を進めているが、驚くべきスピードでアップデートが続いている。Simejiの最初のバージョンから現在までの歴史を、表1にまとめた。頻繁な機能拡張があるだけでなく、全面的な書き直しも何回か行っている。ただごとではない努力が投入されたソフトといえる。

表1●Simejiの歴史
◎Simeji以前
2008年11月17日inJap公開。Google Suggest APIを利用した簡易型日本語入力ソフト
◎Simejiバージョン1
2008年11月18日Simeji公開。Social IME のWeb APIを利用した、日本語入力機能付きのエディタだった
2008年11月19日アップデート版を公開。トラックボールに対応
2008年11月25日SimejiをAndroid Marketに登録
2009年3月8日「n」を「ん」と解釈するようにした。カタカナ入力に対応した
◎Simejiバージョン2
2009年4月29日Simejiバージョン2を公開。Android SDK 1.5のソフトキーボードに対応。Input Method Frameworkを利用し、日本語入力ソフトとしての体裁を整えた
2009年5月6日ハードウエア・キーボードに対応
2009年5月18日フリック入力対応
2009年5月23日ポケベル入力対応
2009年6月9日Google Developer Day 2009 Japan開催。参加者に配布されたGDDフォン搭載の「iWnn」を見て、Simejiの方向性を「自分が欲しい入力装置」と定める
2009年6月19日ローカル辞書機能
2009年6月26日モーションランチャー機能
2009年7月9日IME版SimejiをAndroid Marketに登録。矢野りん氏デザインの新アイコンを採用
2009年7月16日マッシュルーム公開 Simejiのマッシュアップ機能および、Simejiとローカルマッシュアップするアプリケーションの総称
◎Simejiバージョン3
2009年7月19日Simejiバージョン3を公開。OpenWnnのかな漢字変換エンジンを利用、ローカル辞書は削除(Android SDK 1.5r3にOpenWnnが含まれていた)
2009年11月18日Simeji 3.9。OpenWnnをベースにSimejiを移植する形で書き直し、プレビュー公開したもの
2009年12月22日Simeji 3.A。OpenWnn移植版のSimeji。Android Marketで公開
2009年12月28日Wi-Fi経由で文字入力できるSimeji(wimeji)を公開
2009年12月30日Bluetooth経由で文字入力できるSimeji(bimeji)を公開
2010年1月1日x86対応Androidで動作するSimeji(Simeji_x86)を公開
2010年1月6日Simeji 3.B。Android 1.5に対応
2010年1月10日Simeji 3.C。Nexus Oneに合わせデザイン修正など
2010年1月28日Simeji 3.D。パフォーマンス改善など。Android1.5対応版を「Simeji Classic」として分離
2010年4月1日Simeji 3.F。トラックボールのないXperiaなどに対応するためソフトウエア・トラックボールが付いた。ポップアップ・ウインドウにイージング(アニメーション効果の一種)処理を施した

 adamrocker氏は、どのような思い、考えでSimejiを作ってきたのだろうか。