経営環境が大きく変化する中で、情報システムにも変革が求められている。最大の要件は、アプリケーションの変化に備えるプラットフォームの確立だ。ITベンダー各社はどんな基盤像を描いているのだろうか。IBMが主張する基盤像を紹介する。

今日の情報システムが抱える課題

 インターネットや携帯電話の普及に代表されるように、ITは今日の私たちの生活に深く浸透している。情報・通信技術の進展と経済活動の自由化は、予想を上回るスピードで世界のグローバル化を促進した。このような環境の中で、社会や企業のあり方はどのように変わってくるだろうか。それに対して、企業のITシステムは今後、どのような役割を担って行かなくてはならないのだろうか。

 環境問題への関心の高まりを受け、都市における交通渋滞の解決や、水資源の管理などは社会全体の課題として注目されるようになった。同時に、目まぐるしく変化する環境下でいかに優れたサービスを提供し競争力を維持・強化するかは、すべての企業が考えなくてはならない課題である。これからの世界におけるビジネス環境の変化は、従来になく格段に速くなる。

 その理由の一つに、従来は捕捉できなかった正確な情報を、ネットワークを通じて遠隔地からリアルタイムに得られるようになってきたことがある。あらゆるものにマイクロチップやセンサーが埋め込まれつつあるからだ。これらの情報を分析することで、より正確な未来を予測できるようになりつつあることが、ビジネスや社会のありようを大きく変え始めている。

 例えば、従来は地域や業界慣習、技術、法規などにより市場が限定されてきたが、その参入障壁が低くなり、以前には考えられなかった新たな競争者が現れることが考えられる。逆に、さまざまに制限されていた市場を広げる機会をとらえることも可能になる。

 こうした中、IBMが提唱するビジョンが「Smarter Planet」である。環境、エネルギー、食の安全など、地球規模の課題をITの活用により解決し、新たな価値を生み出すことで、地球を“より賢く、よりスマートに”していこうというものだ。

 Smarter Planetが解決しようとしているのは、(1)企業(あるいは社会なども含めた組織)の持つ資源・資産をどうとらえ、どう活用するか、(2)競争に打ちかつための経営スピードを高め、環境変化への適応力・柔軟性を向上させる、の2点である。その実現に向け、四つのテーマを掲げている(図1)。

図1●Smarter Planetの四つのテーマと相互の関係
図1●Smarter Planetの四つのテーマと相互の関係
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テーマ1:ニュー・インテリジェンス(New Intelligence)
莫大な量のデータのリアルタイムな分析から“洞察”を得るための、情報の利活用のこと。

テーマ2:スマート・ワーク(Smart Work)
ビジネスプロセスを市場に合わせて、あるいは、ニュー・インテリジェンスで得た洞察をもとに、自ら変革したり、社内外のさまざまなステークホルダーとの柔軟な連携を一層進めたりするような新しい働き方のこと。企業活動のプロセスやそれに携わる人を、企業の価値を生み出す資源と考え、より多くの価値を引き出す。

テーマ3:グリーン&ビヨンド(Green and Beyond)
地球温暖化対策や、限られた資源の下での持続可能性の追求のこと。個々の企業にとっては、消費エネルギーの削減やグリーン対応、ITを利用した資源の利用効率向上が考えられる。

テーマ4:ダイナミック・インフラストラクチャー(Dynamic Infrastructure)
上記の3テーマを下支えする、俊敏性を備えた企業基盤の構築のこと。