文化庁の文化審議会著作権分科会法制問題小委員会は2010年3月30日に第3回会合を開催した。法制問題小委員会は、著作物を許諾なく利用できる「権利制限の一般規定」(日本版フェアユース規定)について具体的な検討を進めている。今回の会合では、中間取りまとめの素案の書き振りについて、委員が意見を述べた。文化庁の小委員会は、次回の会合(2010年4月中旬頃に開催予定)で中間取りまとめ案を固めることを目指す。日本版フェアユースが法制化された場合、現行の著作権法では合法であると明確になっていない著作物の利用について、一定の範囲内であれば合法であることが明確になる。

 今回の素案では、著作物の利用行為を五つに分類し、日本版フェアユース規定の対象とすべきかを決める際に考慮すべき要素についての考え方が整理された。「利用の質と量が軽微であり、実質的違法性を備えないと評価できる利用」(いわゆる形式的権利侵害行為)については、一定要件の下で日本版フェアユースの対象と位置付けることが適当としている。

 具体的には、いわゆる「写り込み」(写真や映像を撮影する際に、カメラマンが想定している被写体とは別に付随的に著作物が複製されて、その著作物の複製が映っている写真や映像を公衆送信するといった利用)などは対象に含めるべきとした。現行の著作権法は著作権が制限される利用を個別に列挙しており、写り込みは対象になっていない。今回の素案に沿う形で日本版フェアユースの法制化が実現した場合、例えば放送事業者が街頭インタビューを行う際に被写体とともに第三者が著作権を持つポスターを一緒に撮影してその映像を放送するといったことを知らず知らずのうちに行ってしまい、著作権法違反に問われる可能性を危惧しなくても済む。

 さらに「いわゆる形式的権利侵害行為と評価するか否かはともかく、その態様に照らし著作権者に特段の不利益を及ぼすものではないと考えられる利用」についても、一定要件の下で日本版フェアユースの対象と位置付けることが適当と今回の素案で位置付けられている。例えば、権利者から許諾を得て音楽CDを制作する場合、その中間過程でマスターテープが必要になる。こうした合法的な著作物利用の過程で行う複製を著作権の権利制限の対象にすべきとした。

 一方、現行の著作物をパロディーの用途で使うことを日本版フェアユースの対象にすべきかについての結論は、今回の素案では書き込まれていない。日本では、「どのようなパロディーを権利制限の対象にするのか」や「表現の自由や同一性保持権との関係性」などについての議論があまり進んでおらず、検討すべき論点が多く存在する。こうした事情から、「パロディーについては論点の議論を十分に尽くしたうえで、必要に応じて権利制限を個別規定として整備することが適当」とした。動画共有サイトでは、漫画やゲームのキャラクターを使った二次創作物など、パロディー的な作品が数多く投稿されている。法制度の見直しによって、将来的にパロディーがどこまで許容されるかどうかは、動画共有サイの発展の将来性に大きな影響を及ぼしそうだ。