マイクロソフトの仮想化ソフトである「Virtual PC」が無償で配布されるようになったのは、2006年7月からのこと。それまでは、仮想化ソフトはライセンスの面で少し敷居が高かったが、Virtual PCの無償提供開始により誰でも気軽に試せる存在になった。
このVirtual PCが、仮想ハードディスクの保存先として採用するのが「Virtual Hard Disk(以下VHD)」と呼ばれるファイル形式である。この「VHD」は、ホストOSにとっては単なる1つのファイルのように見えるが、Virtual PCの仮想環境内からはあたかもハードディスクのように見える。さらに、Windows 7では本物のハードディスクのように直接起動することができる。今回は、利用範囲が広がった「Windows 7のVHDファイル」を紹介する。
手軽だがすごい「VHD」ファイル
「VHD」という名前を見ると、新しい動画フォーマットのようにも思う人もいるかもしれないが、実はWindows 7の「Windows XP モード」やWindows Server 2008の「Hyper-V」が利用する「仮想ハードディスク」のファイルのことである(図1)。
「VHD」ファイルの内部は、ハードディスクのイメージそのものだ。だが、ディスク上での実態はホストOSから見るとただのファイルである。そのため、自由にコピーしたり移動したりできる。つまり、ハードディスクまるごとの環境を気軽にバックアップしたり移行したりできるのだ。
この手軽さもあって、Windows Vista以降のWindowsでは標準バックアップを「VHD」ファイルの形式で保存するようになった(図2)。また、マイクロソフトは「VHD」の仕様を2005年に公開しており、「VMware」や「VirtualBox」といったサードパーティ製の仮想マシンからも、仮想ハードディスクとして利用できる。
このように、「VHD」ファイルはこれまで主に仮想マシンやバックアップの用途に利用されてきた。だが、Windows 7では仮想OS環境からだけではなく、VHDファイルからいきなりリアルなOSを起動ができるようにもなった。2010年4月時点で「VHD」から直接起動できるOSは「Windows 7 Ultimate/Enterprise」と「Windows Server 2008 R2」のみである。だが、直接OSが起動できるようになったことで、今後ますます「VHD」の利用価値は高まることだろう。