ベライゾン・ワイヤレスなどの米国大手携帯電話事業者が,モバイル・ブロードバンドのプリペイド型サービスを開始した。欧州やアジアでは既にプリペイド型が提供されていたが,米国では一部のプリペイド専用事業者によるものにとどまっていた。米国でのプリペイド型ブロードバンド・サービスの最新動向を紹介する。

(日経コミュニケーション編集部)


武田 まゆみ/情報通信総合研究所 研究員

 米国で大手携帯事業者がプリペイド型のモバイル・ブロードバンド・サービスの提供を始めた。ベライゾン・ワイヤレスとAT&Tモビリティである(表1)。これまでは,MVNO(仮想移動体通信事業者)など一部のプリペイド専用事業者からしか提供されていなかった。一方,大手事業者はプリペイド型の音声サービスは提供していたものの,ブロードバンド・サービスについては長期契約を必要としていた。

表1●米国の携帯電話事業者各社のプリペイド型モバイル・ブロードバンド・サービスの概要
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表1●米国の携帯電話事業者各社のプリペイド型モバイル・ブロードバンド・サービスの概要

 大手事業者が相次いで参入した背景には,不況の影響により,消費者が月額費用の節減と携帯電話の長期契約を避けるため,プリペイド型のサービスに移行している状況がある。

プリペイド専用事業者は販売を強化

 米国のプリペイド型モバイル・ブロードバンド市場をけん引しているのは,地域事業者のリープ・ワイヤレス・インターナショナルだ。同社は2008年12月から「Cricket Broadband」の名称で月額40ドルで5Gバイトまで利用できる(超過分は速度・品質の保証なし)プランを提供していたが,2009年9月には月額50ドル・10Gバイト(同)のプランを投入した。同社の2009年第3四半期の新規加入者数11万6000のうち,9万7000がモバイル・ブロードバンドの加入者。その多くは,他社の音声サービスを利用するユーザーだったという。

 ヴァージン・モバイルも,2009年6月にプリペイド型のモバイル・ブロードバンド・サービスを開始した。同社は,2009年7月にスプリント・ネクステルによる買収に合意し,スプリント・ネクステルのプリペイド携帯サービス分野での地位を強化する役割を担っている。

 同社が提供するプリペイド・プランは,(1)月額10ドルで100Mバイトまで,(2)月額20ドルで250Mバイトまで,(3)月額40ドルで600Mバイトまで,(4)月額60ドルで1Gバイトまで──の4種類。当初USBモデムの価格は149.99ドルだったが,11月には50ドルまで価格を下げ,販売網も家電量販店のベストバイだけから,ラジオシャック,ウォルマートなど量販店,ターゲット・コムといった通販サイトに拡大している。