「ボトムアップの情報共有にうってつけだが、トップダウンの管理や数字の扱いには馴染まない」。先進企業の証言から、「Google Apps」活用の勘所が見えてきた。1年間使ってきた東急ハンズの生の声を基に、効果を引き出す活用方法と弱点について検証する。

 「導入してから約1年たち、ずいぶん活用の範囲を広げた。非常に快適に使えている」。東急ハンズの長谷川秀樹IT物流企画部 部長は、満足げにこう語る。同社が「Google Apps」を導入したのは、2008年12月のことだ。

 当初は電子メールが主体だったが、今やアプリケーションの種類も適用する用途も大きく拡大した。文書共有の「Docs」、社内Webサイト作成の「Sites」、スケジュール管理の「Calender」、動画共有の「Video」などだ。Appsの各アプリケーション以外に、グーグルの PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)である「App Engine」も組み合わせている。

現場の「自慢のアイデア」を共有

 活用例の一つが従業員の勤怠情報の管理と共有だ。Docsの文書共有とCalenderのスケジュール管理機能に、App Engineを組み合わせた、社員はまずExcelを使って勤務時間表を作り、毎月1回Google Docsに登録する。このExcelデータをApp Engineで開発したプログラムに読み込んでデータを抽出。データ形式を変換したうえで、各社員のCalender画面に表示する。

 狙いは不規則になりがちな社員の勤務スケジュールを、きめ細かく把握することだ。「小売業である当社は、土日や祝日の勤務シフトをきちんと把握して共有しておかなければならない。各自のCalenderのトップ画面に勤務シフトの情報を表示して、ひと目でわかるようにした」(長谷川部長)。

 もう一つのApps活用法が、写真や動画を使って現場のアイデアを共有する取り組みだ。Sitesで作成した掲示板サイトに、各店舗の社員が商品の店頭ディスプレイ(陳列棚の様子)を写した写真を投稿。Videoでは家庭用工具などの実演販売の様子を撮影した動画を共有している。

 投稿される動画などは、いずれも各店舗の店長がお墨付きを与えた自信作だ。これを東急ハンズは「ヒント」と呼ぶ。文字通り、顧客に提案する商品活用のヒントという意味だ。動画でアイデアを共有しようという発想は「現場から出てきたもの。ふとしたアイデアでも、社員全員で共有することで、他店が参考にしたり改良の意見を出し合ったりするなど、自由闊達な議論ができている」(長谷川部長)。