米国政府機関によるクラウドサービスの調達が、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)からIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)に拡大する。そして連邦調達庁(GSA)が公開するIaaSのRFQ(見積もり依頼書)を分析すると、政府が求めるIaaSの仕組みが「Amazon EC2」に酷似していることがわかった。

 米国政府機関の“調達検討リスト”に入っているクラウドサービスがどのようなものかは、連邦調達庁(GSA)が開設するカタログサイト「Apps.Gov」(図1)で把握できる。

図1●米国GSA(連邦調達庁)が運用するクラウドサービスのカタログサイト「Apps.Gov」
図1●米国GSA(連邦調達庁)が運用するクラウドサービスのカタログサイト「Apps.Gov」
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 Apps.Govはオバマ政権によるクラウド活用政策(フェデラル・クラウド・コンピューティング・イニシアティブ)の一環として、2009年9月に開設された。同イニシアティブは、クラウド活用によって政府機関におけるシステム導入の速度を向上させ、システムの拡張性を確保すると同時に、コストも削減することを目指す。Apps.Govはサービス調達を円滑にするための政府機関向けWebサイトで、様々なサービスがカタログ化されている。

 GSAはApps.Govに掲載するサービスの種類を段階的に増やす計画だ。開設当初はまず、米グーグルの「Google Apps」や米セールスフォース・ドットコムの「Salesforce CRM」といった、導入が容易な情報系アプリケーションが掲載された。すでにGoogle Appsはカリフォルニア州ロサンゼルス市やワシントンD.C.が導入し、Salesforce CRMは米国陸軍やユタ州政府などが導入している。

 2010年2月からは、より高機能な情報系ツールや、基幹系システムなどが運用可能なIaaSやPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)、政府機関内にクラウド環境を構築する「プライベートクラウド構築サービス」などもApps.Govに掲載される予定だ。Apps.Govの動きに合わせて米国政府機関が調達するサービスの種類も広がりそうだ。

IaaSは3種類に分類

 Apps.Govに掲載されるIaaSの詳細は、GSAが2009年7月30日に発行したIaaSのRFQ(見積もり依頼書)からわかる。GSAは米国国立標準技術研究所(NIST)によるクラウドの定義を採用しており、サービスの種類をSaaS、PaaS、IaaSに、サービスの提供形態を「プライベートクラウド」(単独の政府機関が運用する)、「コミュニティクラウド」(複数の政府機関が共有する)、「パブリッククラウド」(政府機関だけでなく一般企業や一般ユーザーなども利用する)、「ハイブリッドクラウド」(プライベート、コミュニティ、パブリックの各クラウドを連携させたクラウド)があるとしている。

 GSAはIaaSを、任意のOSやアプリケーションが実行できるインフラ環境と定義し、「クラウド・ストレージ・サービス」「仮想マシン」「クラウド Webホスティング」の三つに分類している(図2)。

図2●米国GSAによるIaaS(インフラストラクチャ・アズ・ア・サービス)の分類
図2●米国GSAによるIaaS(インフラストラクチャ・アズ・ア・サービス)の分類
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