2009年10月に東京ビッグサイトで開催されたITpro EXPO 2009展示会で、本連載をベースに「コミュニケーションをもっと意識しよう」というテーマの講演を行いました。

 オープンスペースでの講演で座席は少なく、スライドのみでレジュメもないスタイルのため、どうなるのか不安もありましたが、いざ開始してみると、興味を持って立ち寄られた方が立ったままメモを取るなど、大変熱心に聴いてくださったのが印象的でした。大勢の方が、最新の技術や製品だけでなく、コミュニケーション・スキルについても強い関心を持っているのだと、改めて実感する機会になりました。

 さて、本連載ではこれまで14回に渡って、ヒューマン・スキルの基本となる「聴く力」と「話す力」を軸に、仕事で役立てられるコミュニケーション・スキルについて解説してきました。連載は今回で最後となります。

 最後回となる今回は、ITエンジニアから相談されることが多い、コミュニケーション・スキルにまつわる代表的な疑問や悩みに対して、筆者が日頃から考えている対応方法を紹介していきましょう。最後に、本連載のまとめとして、コミュニケーション・スキルを学んだり実践したりするときに、頭に置いておいて欲しい大切なポイントを紹介します。

Q1 そもそも人と話すのが苦手です。

 自分で「人と話すのが得意だ」って言う人は、あまりいないので安心してください!

 実は私もあまり得意な方ではなかったので、あなたのその気持ちはよく分かります。苦手を克服するきっかけになったのは、前職で大勢の前で話すことが多い業務についたことでした。なんとそれが今の仕事に至るとは…自分でも驚いています。

 IT業界には、文系出身のSEがたくさんいます。理系の人と比較すると、入社した当時は大変だったかもしれませんが、多くの文系出身のSEが第一線で活躍していますよね。これは、仕事で必要な技術スキルを頑張って習得したからにほかなりません。資格も一緒です。あなたも仕事で必要な資格があったら、苦手分野でも一所懸命頑張って取りませんか?

 コミュニケーション・スキルも同じようにとらえてみてはいかがでしょうか。コミュニケーションも仕事のひとつです。スキルとしてとらえることで、学習することができるのです。

Q2 テクニックを活用しようとすると、ぎこちなくなります

 すごいですね!ぎこちなくなる、ということはそれだけ意識してやろうとしている証拠です。

 あなたが小さい頃、初めて自転車に挑戦したときのことを思い出してみてください。最初は、ハンドル操作やバランスの取り方、ブレーキ操作など、いろんなことに気を使わないといけないので、ギクシャクしていたはずです。それでもめげずに何度も繰り返すうちに、徐々にひとつずつ克服し、スムーズに乗れるようになったのではないでしょうか。

 コミュニケーション・スキルも同じなんです。ぎこちないからやめてしまうのではなく、意識してそれを続けることがスキル習得につながるのです。ぎこちないと感じたら「できるようになる最初の段階にいるんだな」と考えてみてください。「はじめの一歩」ですね!

Q3 周りのスキルが低いので、うまくいきません

 確かに自分がちゃんとコミュニケーションを取ろうとしても、先輩や上司など周囲の人のコミュニケーション・スキルが低いと、自分ばかり疲れてしまいますね。

 あなたがそう考えるのは、相手に対して、「こうしたらよいのに」という想いがあるからでしょう。そして、その想いを、相手に伝えていないのではないでしょうか。

 相手が察するのを期待するのではく、自分から「こうしたらあなたのコミュニケーションはもっと良くなる」ということを、積極的に伝えてみてはいかがでしょう?もちろん、その時には伝え方も大切です。一方的に「こうして欲しい」と言うのではなく、相手が受け取りやすい伝え方を心がけてみましょう(「第5回 相手が受け入れやすい伝え方,意識していますか?」を参照してください)。

Q4 最初は意識できても、忙しいとできなくなってしまいます

 仕事が忙しいと、コミュニケーション・スキルのことを忘れてしまいがちです。私も仕事が切羽詰まっている時やイライラしている時は、相手の話を上辺だけしか聴いていなかったり感情的になったりすることがあります。でもそんなときに、周囲の同僚や後輩が指摘してくれると、ハッと気付くことができるんです。

 あなたも「これからこういうところに気をつけてコミュニケーションを取るので、できていない時は遠慮なく指摘してほしい」と、周囲に伝えてみませんか。そうすれば、周囲からのフィードバックで、出来ていないことに気付くことができます。

 実践したいことを紙に書き出して、目の届くところに貼っておくのも効果的です。実はこれ、私の職場でも実践しています。他人の目標が分かることで、ちょっとしたコミュニケーションの活性化にもつながっています!