クライアントの仮想化には「仮想デスクトップ」と「アプリケーション仮想化」の二つがある。後者のアプリケーション仮想化は、アプリケーションをクライアントOSに導入せずに用いる手法だ。画面転送型とストリーミング型の2種類がある。
画面転送型とストリーミング型がある
画面転送型は、サーバー上で稼働させたアプリケーションを複数のユーザーで共用する方式。代表的な製品は、Citrix XenAppとMicrosoft RDSである。その歴史は古く、XenAppの前身となるWinFrameが発表されたのは1995年にさかのぼる。先に見た仮想デスクトップは、画面転送型のアプリケーション仮想化を発展させた形ともとれる。そのため、どちらを使うべきか迷うユーザーは少なくない。オージス総研の事例から両者を使い分ける指針を見よう。
オージス総研の運用サービス本部では、大阪ガスのシステム向けにコールセンターを用意している。「PCが動かなくなった」「ソフトの使い方がわからない」など、日々問い合わせが舞い込む。セキュリティ要件からコールセンター用端末30台をシンクライアント化するに当たり、仮想デスクトップ「Citrix XenDesktop」を選んだ。すでに他のシステムでXenAppを利用していたにもかかわらずだ。
「製品を選んだ当時、ホスト端末エミュレータがXenAppでうまく動かなかった。それに加えて、XenAppがサーバーOS上で稼働するのに対して、XenDesktopは仮想マシン上でクライアントOSが動かせることも大きい。サポート業務という性格上、ユーザーと同じクライアント環境を用意したかった」。オージス総研 運用サービス本部の米田和久システム運用部長は選択理由をこう話す(図10)。
画面転送型のアプリケーション仮想化は、マルチユーザー対応していないアプリケーションが利用できない。一方の仮想デスクトップは、ユーザーごとに仮想マシンでアプリケーションを動かすので、こうした制約がない。さらにサーバー仮想化ソフトの管理機能が活用できることもあり、シンクライアントの主役の座は仮想デスクトップに移りつつある。
ただし、画面転送型のアプリケーション仮想化にもメリットはある。仮想デスクトップよりもクライアントの集約率が高いことだ。前者が一つのOSを複数人で共用するのに対して、後者はユーザーの数だけOSが必要。集約率が高ければサーバーのスペックや台数を抑えられる。
例えばシトリックス製品で見れば、XenAppの方がXenDesktopよりも集約率は高いといえる。竹内担当部長は「XenDesktopでユーザーごとにOSを用意する必要があるかというと、そうではないケースも多い。その場合はXenAppで十分だ」と話す。