決しておもねず、決して妥協せず--。誰にもおもねることのない一人のエンジニア。決して人嫌いではないが、テクノロジがもたらす価値を社会に還元するために、常に最善を尽くす。そんなエンジニアとしての生き方を貫く主人公「渡瀬浩市」と、その秘書「高杉伊都子」、渡瀬に認められた中学生「金田京太郎」。3人が出会ったエンジニアの思いはいずれも熱かった。

「Xjoin は 革新的なITツールだと確信しています。必ず、お客様のお役に立てるツールで、開発の生産性や品質を飛躍的に向上させられると信じています」

 高木社長は気に留めず、話を続けた。

「従来のやり方を続ける限りではいつまでたっても、失敗プロジェクトがなくならない。相変わらず徹夜の連続で、学生からの魅力も薄れ、IT産業が衰退してしまうのではと危惧しています。
 労働集約型ではなく、いかに知識集約型のシステム開発を目指すかが大切なんです。この気持ちを、素直にお客様にぶつけることで、お客様の気持ちを引き出そうとしてきました。
 昔からシステム開発で苦労されてきたマネジャーの方であれば、このことは直ぐにご理解いただけます。ですが、最近の安易な開発手法に慣れた人たちには、なかなか理解されないのが辛いところですけれどね」

「素直にお客にぶつけることが高木らしいな。お前は昔から正直な男だよ」

「渡瀬だって正直じゃないか。納期に間に合わない時は客が怒ろうとも説明するなど、決していい加減な判断はしないじゃないか」

「お二人とも正直でいらっしゃると思います。顧客の顔色ばかりを見て、あいまいな判断をする方っていますからね」

 私は仕事に正直な渡瀬と高木の姿勢に感動していた。

「金田君がメモをしていますから、もう少し詳しく説明しましょう」

 高木社長はホワイトボードに箇条書きに書き始めた。

・お客様の立場で考える
・あきらめない
・お客様の隠れた質問や要望事項を読み取る

「お客様が質問をされる場合、素直に疑問点を聞いてこられない場合がよくあります。 遠まわしに質問したり、わざと否定的なことを言ってみたり。実はそのことが一番重要だったりするのです。本当にお客様が意図していることは何なのかを知ることが、最も重要だし最も難しいのです」

・商品を売らずに、自分を売る=そのためにはいつも誠意を持って接する
・正直に対応する
・他社製品の悪口は言わない=相手のツールを認めながら、Xjoinの優位性を説明する
・押し売りはしない。納得してもらう
・やるか、やらないかを迷ったときは、極力実現に向けて進む。プラス方向へ
・心を豊かに、感謝の気持ちを忘れずに、お客様に喜ばれるように

「以上が私の営業理念と営業で心がけている点です」