慶應義塾大学の国領二郎教授,金正勲准教授らがネットビジネスに関する政策検討などを目的に立ち上げた「ネットビジネスイノベーション研究コンソーシアム」のシンポジウムが2月上旬に開催された。シンポジウムには内藤正光総務副大臣,近藤洋介経済産業政務官,津村啓介内閣府政務官(IT戦略担当)といった民主党政権のICT分野の中枢メンバーのほか,ソフトバンクの孫正義社長,グーグルの村上憲郎名誉会長といったネット企業のトップが顔を並べた。

 出席者の中で会場を最も沸かせたのはソフトバンクの孫社長。「国家の成長戦略は伸ばしやすい分野を伸ばす。過去十数年で最も伸びているIT分野をさらに70兆円分成長させ,日本を情報立国にすべき」とぶち上げた。分かりやすい考え方を先に示して結論に導こうとする孫社長のプレゼンは,政治家顔負けといったところだ。

 このようなビジョン提示型の政策立案は民主党政権のアプローチとよく似ている。そのためか,ここに来て孫社長と民主党政権が急接近している様子が見える。例えば原口総務大臣は最近の新聞インタビューなどで,孫社長がよく口にするNTTの光インフラの分離などに触れ始めている。

 こうなると穏やかでいられないのがNTTグループ。自民党政権下でNTTは族議員と結び,密室で政治決着へと導くやり方を得意としていたが,政権交代後は民主党とのパイプ作りに苦労している様子が聞こえてくる。

 それならいっそ,従来とは違うやり方で,日本の成長に寄与するような自らの戦略を広く提示してはどうか。オープンな場での政策論議が深まるのであれば大歓迎だ。