PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)というと、どうしても「管理屋」のイメージが先行するのではないか。しかし、数々のプロジェクトを見てきた中で、現場がPMOに一番求めていることは、進捗管理や課題管理を厳格に実行してメンバーを追いつめていく役割でない。実は、一緒に考えて、一緒に行動し、ときには行動するためのお膳立てを実施し、メンバーの背中を少し押してあげることが必要とされている。

後藤 年成
マネジメントソリューションズ マネージャー PMP


 「プロジェクトを管理すること」――。PMOがプロジェクトから期待されていることを一言で言えば、こうです。さて、プロジェクトを管理するとは一体どういうことでしょうか。

 それは、あらかじめ立てられたプロジェクト・ベースラインに沿って、予定通りにプロジェクトが進んでいるかを見える化することでしょうか。それとも、遅れに対して、原因を追究して課題を解決していくことでしょうか。あるいは、マネジメント層に対してプロジェクトの状況報告のためのレポートを取りまとめることでしょうか。上述したことは、すべてPMOにて「管理すること」にあてはまります。

 しかし、重要なポイントは、それらの活動にPMOがどのようにかかわっていくかです。PMOとして「やってはいけない」管理スタイルとしては、「評論家にならないこと」です。

 例えば、「この課題の根本原因は、要員のスキル不足が原因だから、要員交代を検討すべきだ」「このリスクは、総合テストまでに解決すべきだ」「進捗状況をもっと見える化すべきだ」などの言動は評論家的です。プロジェクトに対して、他人事のように“アドバイスしてやっている”というようなPMOは、あなたの周りにはいないでしょうか。

管理を厳重にしても進捗は進まない

 経験上、進捗報告を毎日させるなど、管理を厳格にしても、メンバーが息苦しくなるだけです。管理工数が増えるばかりで、決して進捗するわけではありません。

 かく言う私も、進捗の遅れなどに際して、こと細かに報告させていた時期もありました。しかし、「進捗管理を実施しているのだ」と自己満足していただけであり、「管理のために管理することが目的化」していました。

 当然、そのような管理はうまく行かず、メンバーのモチベーションを下げてしまうことが多々ありました。言い換えれば、「どのようにやればうまく管理できるか?」が目的となってしまい、本来のプロジェクト管理の目的である「どうすれば、プロジェクトを成功に導けるか?」という視点が抜けてしまっていたのです。