前回までの連載で、日本企業に残された時間は「3年しかない」と説明してきた。早急にIFRS対応プロジェクトを立ち上げるべき状況なのだ。その中で情報システム部門がまず決断すべきことは、IFRS対応を見据えた基幹システムのあり方だ。選択肢は三つある。

 IFRS対応プロジェクトで情報システム部門が決断すべき内容は、フェーズに応じて異なる。プロジェクトの全体方針を立案する段階では、海外子会社を含めたグループ全体の基幹システムのあり方を検討しなければならない。個々のシステムを修整する段階では、日本の会計基準からIFRSへの変更点に応じた作業が必要になる。

 基幹システムのあり方は「3パターン」にまとめられる。IFRSへの対応により、何を目指しているかに応じて、自社に合うパターンを選べばよい。

 システムの修整では、多くの企業に共通し、影響が大きい「四つの変更点」が挙げられる。システム部門は3パターンと四つの変更点について理解し、正しく決断することが大切だ。

基幹システムの3パターン

図1●IFRS対応を見据えた基幹システムのあり方には3パターンある
図1●IFRS対応を見据えた基幹システムのあり方には3パターンある
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 プロジェクトの全体方針を決める際に考える3パターンを図1に示す。違いは基幹システムの統合度合いだ。

 統合度合いが最も高いのがパターン1である。アプリケーションだけでなく、勘定科目や商品コードといったマスターデータまでグループ全体で統一するグローバル統一システムだ。

 グループ全体で業務の標準化を実施し、会計基準もIFRSに統一する。IFRSに基づいたデータを収集するので、人手をほとんど介さずに連結財務諸表を作成できる体制が整う。経営状況を迅速に把握できるなど、IFRS対応以外の効果もある。

 対極にあるのがパターン3だ。本社、グループ子会社の基幹システムは統一せず、既存のシステムを生かす。システムを変更しないので、グループ各社が採用する会計基準は異なったままのケースがほとんどだ。

 パターン1とパターン3の中間がパターン2である。本社と主要な子会社など、グループ企業の一部の基幹システムを統一する方法だ。統一した基幹システムを利用している企業は、IFRSに基づいて会計基準を統一する。これにより、IFRSに基づく連結財務諸表の作成を簡素化する狙いがある。