アクセンチュア IFRSチーム
テクノロジー コンサルティング本部
シニア・マネジャー
大野 純一

[Question5]
IFRS適用は日本では最も早くて2015年からと聞きます。今からIFRS対応の検討を始める必要がありますか?

 IFRS(国際会計基準)への対応には時間がかかります。IFRS対応を進めてきた海外事例や、影響分析やロードマップ策定に着手した日本企業における事例を見ると、望ましい対応を進めるためには年単位の期間がかかることがわかっています。

 企業はできるだけ早く、IFRS対応に向けた第一歩を踏み出すのが望ましいと言えます。

欧州は準備期間が2年半

 他国に先駆け、域内上場企業にIFRSの強制適用を実施した欧州では、準備期間が実質約2年半しかありませんでした。強制適用が事実上確定したのは2002年7月19日、実際に強制適用を開始したのは2005年1月1日です。

 準備期間が短かったので、多くの対象企業はIFRSに基づいた財務諸表を作成するための必要最低限の対応にとどまりました。すなわち、各国の会計基準下で作成した財務諸表を、財務・経理部門がIFRSに対応した財務諸表に組み替えるという形をとりました。

 このやり方では決算のたびに手作業が発生するため、財務・経理部門の負担は大きくなってしまいます。加えて、経営環境がより急激に変化する現在、その変化のスピードに合わせた対応ができないという問題もあります。

 そのため欧州企業の多くは、強制適用後もIFRS対応の作業を続けました。経理業務だけでなく経営管理の高度化を目指し、全社レベルでのシステムの統一を視野に入れて単体決算の仕組みを含めた対応を進めました。結果的に、二重投資をする羽目に陥ってしまいました。

残り5年を有効活用すべき

 日本では、IFRSの強制適用は早くて2015年と言われています(関連記事:キーワードで理解するIFRS [16]ロードマップ)。強制適用まで約5年の準備期間を設定できるというのは、日本は欧州に比べ、企業が十分に対応できる時間が確保されていることを意味します。

 とはいえ、IFRSの強制適用まで時間がまだまだあると考えるのは禁物です。下手をすると、対応期間が十分でなかった欧州企業と同じ道をたどらざるを得なくなってしまいます。日本企業は与えられた時間を有効に使い、効率的に対応・高度化を図っていくことが大切です。