アクセンチュア IFRSチーム
テクノロジー コンサルティング本部
シニア・マネジャー
大野 純一

[Question4]
J-SOX(日本版SOX法)対応は大変でした。IFRS対応も同じように大変なのでしょうか?

 IFRSへの対応では、J-SOX(日本版SOX法)対応以上の負担がかかると想定されています。二つの視点からその理由を説明します。

グループ全体での取り組みが必要

 J-SOXへの対応は、必ずしもグループ全体での取り組みとはなっていませんでした。多くの場合、個社ごとの対応に閉じていたのが実態であるとみられます。

 これに対しIFRS対応では、財務報告だけでなく、予算編成や予実績比較・KPI(Key Performance Indicator:主要業績指標)管理といった業績管理などについても、グループ全体で整合している必要があります。そのため、IFRS対応の目標設定や対応の推進をグループ全体の視点で実施していかなければなりません()。

図●IFRSに基づく統一情報体系によるグループ経営管理推進
図●IFRSに基づく統一情報体系によるグループ経営管理推進
作成:アクセンチュア

経営管理や業務プロセス、システムまで影響が大きい

 IFRS対応は会計制度の変更にとどまりません。グループ経営管理の変革を求めるというのが本質です。

 企業経営では「制度・ルール」「業務プロセス」「システム」「組織・人材」という四つの事業インフラを利用します。IFRS対応はこれらすべてに影響する、非常に大きな変革です。このため、対応に要する作業のボリュームはJ-SOXよりも大きなものになります(詳細は、Q5「IFRS対応に向けた検討は今から始めるべき?」を参照)。

各社の裁量で決める事項が多い

 IFRS対応に関する議論は現在、会計基準や開示方法といった会計に関する技術的な話が中心です。これらについては、監督当局や監査法人からアドバイスをもらうことができます。

 しかし、対応を具体化する際は、各社の裁量で判断していく必要があります(詳細は今後の連載で説明します)。IFRSの特徴の一つとして原則主義があるからです(Q1「IFRSは、今の日本の会計基準とどう違う?」を参照)。

 ただでさえ作業量が多いうえ、個別テーマの議論、全体の調整などの必要もあります。場合によっては、外部の有識者の協力も要請しつつ進めることが有効です。

大野 純一(おおの じゅんいち)
アクセンチュア IFRSチーム
テクノロジー コンサルティング本部
シニア・マネジャー
東京工業大学工学部経営工学科卒。1993年にアクセンチュアに入社後、ERPを活用した基幹系業務改革コンサルティングおよびシステム再構築業務を経験。現在はIFRSチームの中心メンバーとして、診断プロジェクトなどに従事。