小川 大地
日本ヒューレット・パッカード

 サーバー仮想化ソフトのVMware vSphere 4は、ハイパーバイザー「VMware ESX」と各種の拡張ツール群で構成される。今回は、パフォーマンスとストレージ機能に焦点を絞り、VMware vSphere 4の新機能を紹介しよう。

 前回はVMware vSphere 4の多岐にわたる新機能と細分化されたエディション構成を概観した。今回は、パフォーマンスとストレージ機能に焦点を絞り、VMware vSphere 4の新機能を紹介しよう。

ハードウエア・アシストで性能向上

 ハードウエア・アシストは、仮想化に伴う処理の一部をハードウエア側へ移す(オフロードする)ことにより、CPUの負荷(仮想化に伴うオーバーヘッド)を減らす技術である。

 vSphere 4が対応しているハードウエア・アシストを表1に示す。この中で最も期待できるのはIntel EPT(Extended Page Tables)とAMD RVI(Rapid Virtualization Indexing)だろう。これらは「第2世代ハードウエア・アシスト」と呼ばれ、待望されていた。ヴイエムウェアのベンチマーク結果によれば、Intel EPTを利用すると、ゲストOSの処理性能が3~5割向上するという。

表1●vSphere 4が対応しているハードウエア・アシスト
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表1●vSphere 4が対応しているハードウエア・アシスト

 また、別のハードウエア・アシストを利用した魅力的な機能として「VMDirectPath I/O」が追加されている。この機能はゲストOSがネットワークやディスク・アクセスを行う際に、Intel VT-d(IntelによるI/O仮想化支援機能の総称)がアシストすることで、ハイパーバイザーを介さず、物理NIC(Network Interface Card)やHBA(Host Bus Adapter)に直接パススルー・アクセスするというものだ(図1)。ハイパーバイザーを介さないため、仮想化によるオーバーヘッドが発生しない。つまり、仮想化しない場合と同じスループットを得ることができる。

図1●「VMDirectPath I/O」ではゲストOSが物理デバイスに直接パススルー・アクセスする
図1●「VMDirectPath I/O」ではゲストOSが物理デバイスに直接パススルー・アクセスする
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 また、外部ストレージのコントローラなども、ゲストOSから直接認識できる(図2)。

図2●VMDirectPath I/Oでは外部ストレージのコントローラなどもゲストOSから直接認識できる
図2●VMDirectPath I/Oでは外部ストレージのコントローラなどもゲストOSから直接認識できる

 ただし、VMDirectPath I/Oは、今回のリリースでは第1フェーズという位置づけで、まだ試験実装に近い。具体的には、NICやHBAが一部モデルに限定されており、VMotionなども利用できない。このため、VMDirectPath I/Oの利用は今回見送るというユーザーも多いだろう。

 しかし近い将来、この機能がフルサポートされたときのインパクトは非常に大きい。物理環境と同じスループットを出せるとなれば、性能低下を理由にためらっていた範囲まで仮想化で問題なくカバーできるようになる。

 ハードウエア・アシストを活用するには、当然ながらサーバー機器などハードウエア側の対応も必要だ。vSphere 4を導入する際には、ハードウエア選定が非常に重要なポイントになってくるだろう。