小川 大地
日本ヒューレット・パッカード

 サーバー仮想化ソフトのVMware vShere 4は、ハイパーバイザー「VMware ESX」と各種の拡張ツール群で構成される。約3年ぶりにメジャー・アップグレードを果たし、機能と性能が強化された。今回は、VMware vShere 4の新機能と細分化されたエディション構成を見てみよう。

 ヴイエムウェアはVMware Infrastructure 3(VI3)の次期バージョンとして「VMware vSphere 4」をリリースした。vSphere 4という名称は統合ブランド名であり、実際には自らがOSとして動作するハイパーバイザー型の仮想化ソフトウエア「VMware ESX 4.0」と、それを統合管理しつつ、さらにVMware VMotionやVMware HA(High Availability)などの付加価値を実現する「VMware vCenter Server 4.0」が中核となる。

 約3年ぶりのメジャー・アップグレードとなったvSphere 4は、従来のバージョンと比べてさまざまな点が強化されている。性能の向上はもちろん、スケーラビリティやフォールト・トレランスなど、ミッション・クリティカルなシステムの要求に耐え得る数々の機能が実装された。また、多数のVMware ESXホストが稼働する環境でも、効率良く運用できる仕組みが随所に見られる。

 ここでは、vSphere 4で追加または強化された機能の全体像と、豊富になった同製品のエディション構成について説明したい。

ESXからESXiへの移行を検討する

 最初にハイパーバイザー本体について簡単に説明しよう。vSphereではESXとESXiという管理アーキテクチャの違う二つのハイパーバイザーを利用できる(図1)。ESXiとは、2008年にリリースされた次世代型のESXである。エントリ版である「ESXi StandAlone」が無償公開されているので、使用経験のある読者も多いかもしれない(ESXi StandAloneはvSphere 4では「ESXi Single Server」に名称変更されている)。

図1●ESXとESXiの管理アーキテクチャの違い
図1●ESXとESXiの管理アーキテクチャの違い
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 ESXとESXiの違いは管理OSの有無だ。ESXでは「サービス・コンソール(Service Console)」と呼ばれるRed Hat Enterprise Linuxベースの管理OSが一緒にインストールされ、これがハイパーバイザーと密に連携する。コンソール・シェルにログインして利用するもので、シェル・スクリプトを独自作成し、カスタマイズ運用することも可能だ。

 しかし、サービス・コンソールに汎用的なOSを採用しているため、不具合や脆弱性対策のパッチを随時適用していかなければならない。さらにハイパーバイザー層と密に連携しているため、パッチを適用すると、サービス・コンソールのOSだけでなく、システム全体の再起動が必要となる。つまり、仮想化部分に直接関係がないにもかかわらず、パッチ適用による計画停止やリブートが必要となっていた。

 これに対し、ESXiにはサービス・コンソールが無い。つまり、パッチ適用による計画停止の原因が半分なくなる。またログイン・シェルもないため、セキュリティ・リスクも激減する。シェルがないと柔軟なカスタマイズ運用ができないと思われるかもしれないが安心してほしい。リモートからコマンドラインを実行して管理できるほか、サービス・コンソールをゲストOSとして実装したVMware Management Assistant(vMA)というアプライアンスが無償で用意されているため、既存のシェル・スクリプトも活用可能だ。vMAはゲストOSであるため、再起動してもESXホストに影響を及ぼさない。

 ヴイエムウェアは、今後ESXiをメインにしたいと考えている。従来型のESXはvSphere 4で終息し、次のメジャー・リリースではサービス・コンソールのないESXiに一本化する計画だ。現在、ESXとESXiの2種類が用意されているのは移行のための特別措置だろう。これから新規にvSphere 4を導入するのであれば、ESXではなく将来を見据えてESXiを検討すべきだ。

 なお、従来型のESXは、ESXiと区別するために「ESX Classic」とも呼ばれている。