英BTグループ パブリック&ガバメント・アフェアーズ部門
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ラリー・ストーン 英BTグループ パブリック&ガバメント・アフェアーズ部門
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 米国のICT業界では今,「ネットワーク中立性」(ネット中立性)の議論が一番のホットな話題になっている。米FCC(米国連邦通信委員会)が2009年秋に,ネット中立性に関し107ページに上る提案書を出したことで議論が再燃しているからだ。

 FCCは2005年に「ユーザーが選択した合法的なコンテンツへのアクセスを,誰も妨げてはならない」など4項目を掲げたネット中立性の原則を示した。今回の提案書ではそこに新たに2項目を付け加えている。特に重要なのは,「合法的なコンテンツ,アプリケーション,サービスの扱いを差別してはならない」という項目だ。通信事業者はネットワークの運用に支障がない限り,例えばネット事業者のサービスのトラフィックと,一般のユーザーのトラフィックを区別して扱ってはならないことになる。

競争こそが中立性を担保する

 英BTは,このネット中立性に関する米国の今後の動きに高い関心を持っている。FCCが公平な競争原理をどのように解釈し,適用するのか。インターネットのようなグローバルなサービスがどのように規制されるのか。既にネットワークで世界が結ばれている現在,ネット中立性の議論は米国内にとどまらず,世界の全体にかかわる重要な問題なのだ。

 これまでのところ英国の規制機関であるOfcomやEU(欧州連合)は,競争環境の整備こそがネット中立性を保証する最善の策であるという見解を明らかにしている。ローカル・アクセスなど,いわゆるボトルネックとなる設備に対してアンバンドルなどの規制を有効に働かせることで,ネット中立性の原則に従って適切なサービスが提供されるという考え方だ。

 従って,米国でもネットワークのアクセス部分のボトルネックに対する規制を確実にすることがよりよい結果を生むのではないかと考えている。例えば英国では,独立した機関による監視と指導によって,アクセス部分の機能分離が成立し,公平性が担保されている。

 BTとしては,ネットワークを持つすべての通信事業者は公平の原則に基づいて,すべてのコンテンツをネットワーク上で同等に流通させるべきだと考えている。公平の原則には当然ながら自社部門も含まれる。

 その一方で,通信事業者がQoS(quality of service)を保証したレベルが異なるサービスを提供する場合は,追加料金を請求できるようにすべきである。

 企業ユーザーなどは,ネットワークの優先的な利用を求めるケースがある。こうした場合はいずれもネット中立性の原則にある差別的扱い(discrimina-tory)と見なされてはならない。同時に,通信事業者がトラフィックやセキュリティを管理するに当たっては,通信の秘匿の義務を侵害してはならない。

 この問題については,日本も含めて広く対立する意見を聞くことが懸命な方法であると思う。

ラリー・ストーン(Larry Stone)
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 1月末に開催された世界経済フォーラム(WEF,通称ダボス会議)に出席した。市場開放,社会の持続可能性,経済復興に関して有益な議論が行われた。個人的には,同じ日の夜に日本,韓国,インド3カ国の交流イベントに参加できたことが嬉しかった。日本からはすばらしい食事と様々なお酒,韓国からは有名なポップスター,インドのイベントではダンス。WEFのようなグローバルな集まりでないとできない経験だった。