米国の大手書籍小売り,バーンズ・アンド・ノーブル(B&N)が米アマゾン・ドットコムの「Kindle」対抗として2009年11月から販売している電子書籍リーダーが「nook」だ。このデバイスが興味深いのは,OSとしてAndroidを搭載していることである。同端末を入手することができたので,今回評価してみた。評価では特に,Androidらしさがどの程度見えるかに特にポイントを絞った。
評価の内容を伝える前に,nook自体の機能を整理しておく。表1にあるようにnookはKindleと同様に800×600ドットの6インチの電子ペーパーを備えている。機能としては,PDFやWordファイルの閲覧機能,音楽再生の機能などを備える。
nook | Kindle 2 | |
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開発 | 米バーンズ・アンド・ノーブル | 米アマゾン・ドットコム |
外形寸法 | 195.6×124.5×12.7mm | 203.2×134.6× 9.1mm |
重さ | 343g | 289.2g |
画面サイズ | 6インチ | 6インチ |
操作インタフェース | 3.5インチ・カラー液晶 | ボタン |
画素数 | 800×600ドット | 800×600ドット |
無線通信機能 | 第3世代携帯電話,無線LAN | 第3世代携帯電話 |
テキスト読み上げ | なし | あり |
音楽プレーヤー | あり | あり |
価格 | 259ドル | 259ドル |
電子書籍としての機能にほとんど差はないが,ユーザー・インタフェース(UI)がKindleと大きく異なる。nookは画面の下に3.5インチのカラー液晶パネルを装備しており,ここを使って機器を操作できる(写真1)。一方,Kindleはキーボードやボタンによって操作を行う。
nookの操作では,電子ペーパー上の表示内容やユーザーの操作に従い,タッチパネル部分の表示が変わっていく。このUIは慣れが必要だが,使い込んでいくうちに気にならなくなった。逆に,電子書籍購入の際に,カラーで表紙カバーを表示できるなど,KindleよりもUIに面白みを感じた。
このほかハードウエアの面では,Kindleが第3世代携帯電話モジュールのみを搭載しているのに対し,nookは無線LANも搭載している点に違いがある。
将来はアプリ開発環境を公開?
さて,評価のポイントであるAndroidらしさについて見てみる。Androidの本体部分は,タッチパネルの部分であり,電子ペーパー部分はサブ画面という形で実装されているようだ。つまり,このタッチパネル部分がどれだけ従来のAndroidを残しているかで,Androidらしさを調べることが可能だ。
結論を言うと,Android的な部分は完全に隠蔽(いんぺい)されており,Androidであることは全然,感じられない。あえて,挙げるとすれば無線LANの設定メニューの内容が,スマートフォンのAndroidと似ている程度だ(写真2,写真3)。
この実装を見る限り,B&NがAndroidを使った理由は,開発を簡易化するためだったと思われる。わざわざ自社で開発しなくても,Androidには無線LANやキーボード,音楽プレーヤーなどB&Nが電子書籍に求めていた機能がセットで提供されていたために,これをそのまま使ったわけだ。従来から指摘されてきた組み込み機器でのAndroidの使い方であるが,それを実際に使ってしまうB&Nの実行力に感心した。
既にWeb上のコミュニティでは,nookを解析し,様々なアプリケーションを載せる試みがされている(nookDevsのサイト)。Dalvikの仮想マシンも動いているようだ。B&Nはnookのアプリケーション開発環境を将来,外部に提供することを想定し,Androidを使ったとも考えられる。実際,アマゾン・ドットコムはKindleのアプリケーション開発環境のベータ版の公開を開始している(アマゾンのブログ記事)。