IT業界の企業にとっては、総合順位だけでなく、学生に自社がどう見られているのか気になるところだろう。本調査では、第1~3志望の企業について、「仕事の魅力」「会社の魅力」「雇用の魅力」「採用活動の魅力」といった四つの観点から、志望理由を回答者に聞いている。

 志望理由別に、その比率の高い企業のランキングを見てみよう(図1)。

図1●志望理由別ランキング(その志望理由の比率の高い順)―<仕事の魅力>
図1●志望理由別ランキング(その志望理由の比率の高い順)―<仕事の魅力>
図1●志望理由別ランキング(その志望理由の比率の高い順)―<仕事の魅力>
図1●志望理由別ランキング(その志望理由の比率の高い順)―<仕事の魅力>
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 「仕事の魅力」から見ていくと、「社会に役立つ仕事ができる」という理由で志望する回答者の比率が最も高かったのが、日本総合研究所だ。「三井住友フィナンシャルグループ向けなどのシステムは社会を支える重要なインフラである」という点を学生に強調していることが、受け入れられているようだ。「ITなど専門スキルが身に付く」では日本オラクルが1位だった。

 「実力があれば若いうちから活躍できる」では、アクセンチュアが1位になった。「欧米や新興国など海外で働ける」では、マイクロソフト、グーグル、日本IBMなど外資系が上位を占めており、分かりやすい結果となった。

 「技術職や営業職など業務の幅が広い」については、有効回答件数が314件と少なく、比率も大差が付かなかった。それでも順に見てみると、パナソニック情報システム、日立、富士通の順になった。

「技術力がある」は、日本オラクルが1位

 「会社の魅力」はどうか(図2)。

図2●志望理由別ランキング(その志望理由の比率の高い順)―<会社の魅力>
図2●志望理由別ランキング(その志望理由の比率の高い順)―<会社の魅力>
図2●志望理由別ランキング(その志望理由の比率の高い順)―<会社の魅力>
図2●志望理由別ランキング(その志望理由の比率の高い順)―<会社の魅力>
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 「経営者・ビジョンに共感」での首位は、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)だ。キヤノングループの企業理念である「共生」や行動指針「三自の精神(自発・自治・自覚)」に共感を覚える学生が多いということだろう。

 「提供している製品・サービスの内容がわかりやすい」の項目では、大塚商会、ミクシィ、ヤフーの順である。「ITサービス企業の仕事は学生にとって分かりにくい」という声が多いなか、大塚商会がトップに立った点は目を引く。

 「技術力がある」では、日本オラクルが1位である。世界でデータベースソフトの分野で地位を確立している点は、学生にとって魅力的ということだろうか。IBMやマイクロソフトをかき分け、国産システムインテグレータである新日鉄ソリューションズが2位に割って入ったことも見逃せない。

 「安定している」での首位は、東京海上日動システムズである。日本総合研究所がこれに続く。ここでの上位をざっと見ると、親会社が大企業であることが分かる。「成長性が高い」では、ミクシィ、楽天、グーグル、ヤフーといったネットビジネス企業が上位を占めた。

「年収が高い」は、NRIが首位

 次は「雇用の魅力」だ(図3)。

図3●志望理由別ランキング(その志望理由の比率の高い順)―<雇用の魅力>
図3●志望理由別ランキング(その志望理由の比率の高い順)―<雇用の魅力>
図3●志望理由別ランキング(その志望理由の比率の高い順)―<雇用の魅力>
図3●志望理由別ランキング(その志望理由の比率の高い順)―<雇用の魅力>
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 「教育研修に熱心」を理由に挙げた割合が最も多かったのが、日本ユニシスである。同社は2~3年間、ITスキルや業務知識、提案力など基礎を身に付けるための教育期間とし、この点を学生に説明している。「雇用を守る」は、みずほ情報総研、「福利厚生がしっかりしている」は東京海上日動システムズがそれぞれ1位だった。

 「年収が高い」は、NRIが首位だ。これにアクセンチュア、IBMビジネスコンサルティング サービス(IBCS、今年4月に日本IBMと経営統合)が続く。「社風・居心地が良い」は傾向を分析することは難しく、オービック、ミクシィ、グーグル、キヤノンMJ、楽天の順になった。

 人事部門にとっては、「採用活動の魅力」も気にところだろう(図4)。

図4●志望理由別ランキング(その志望理由の比率の高い順)―<採用活動の魅力>
図4●志望理由別ランキング(その志望理由の比率の高い順)―<採用活動の魅力>
図4●志望理由別ランキング(その志望理由の比率の高い順)―<採用活動の魅力>
図4●志望理由別ランキング(その志望理由の比率の高い順)―<採用活動の魅力>
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 「採用広報のイメージが良い」「採用担当者と接して好感が持てた」の2項目で、オービックが1位になった。

 同社は、「求む!ふまじめ人間」というメッセージを打ち出し、採用活動を進めている。新卒採用のみで中途採用はしないという方針であることから、学生にとっては、他社よりも新卒採用に対して熱心であるように見えるのかもしれない。

 「セミナー・説明会での説明が詳細で分かりやすかった」は、日本ユニシス、NTTコムウェア、大塚商会の順である。「質問・疑問に明確に答えてくれた」についての割合に大きな差は付かなかったが、新日鉄ソリューションズと東京海上日動システムズが1位になった。

 「一般社員と接して好感が持てた」はNTTデータが1位である。同社はセミナーで、学生と現役社員と対話する機会を設けることに力を入れている。この点が受けているようだ。