人事分野において、給与計算のアウトソーシングサービスは40年以上の長い歴史を持つ。その一方で、同じ人事分野でも勤怠管理、人事管理は自前運用が一般的だった。ところがここ最近、勤怠管理、人事管理のSaaS化が進展。アマノビジネスソリューションズの「CYBERXEED」やユーフィットの「QuefitZeeM」のように、勤怠・給与計算・人事管理の各機能をバックエンドで自動連携させるようなサービスも登場した。こうしたサービスを利用すると、人事担当者がシステム別に重複して情報を集計したり入力したりする必要がなくなる。

 そうした複合サービスでなくとも、SaaS化の恩恵は大きい。人事分野固有の問題として、労働関連法規の改正などで修正パッチ適用やバージョンアップの必要に迫られることが多いという悩みがあった。あるパッケージソフトでは年10回を超えたこともあるという。SaaSではこうした手間やコストからユーザーを解放する。

 料金体系は2種類。社員数に応じて課金するものと、人事担当者の人数に応じて課金するものだ。前者の料金体系を採用する事業者はアマノビジネスソリューションズやHOYAサービスなどだ。勤怠管理だけの場合で社員1人当たり300円から400円が相場だ。後者はスマイルワークスやピー・シー・エー。ともにスタンドアローン版給与計算ソフトの置き換えを狙ったSaaSで、それとの整合性を取るためにこうした料金体系を採用している。

 導入時に別途必要となるのが、利用者(人事担当者)への導入支援である。人事関連システムは人事担当者が使いこなせないと導入の意味がないからだ。ユーフィットを例に挙げると、担当者への教育、設定の検証、初回の給与計算への立ち会いと結果検証を導入支援サービスとして提供する。500人規模の企業で330万円の費用がかかるが、「利用する企業のほうが多い」(宮内孝ERPソリューション部シニアエキスパート)という。

 このほか、既存システムや人事マスターからのデータ移行も必要だ。多くのSaaSはデータ移行支援機能を備え、これを使えば追加費用はかからない。しかしSaaS事業者やITサービス企業に作業を委託すると、大企業で数百万円程度の費用がかかる。

表1●SaaS型人事管理・給与計算の料金
この記事は「日経コンピュータ」2010年2月27日号を転載したものです。表にある情報は雑誌掲載時点のものです。
表1●SaaS型人事管理・給与計算の料金
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