アイルランドの調査会社StatCounterによると、米Microsoftが欧州連合(EU)の競争法に関する係争で欧州委員会(EC)と結んだ和解条件が、早くも同社のWebブラウザ「Internet Explorer(IE)」にマイナスの効果を与えた。同社の調査結果を見ると、英国やフランス、イタリアといった国々ではこの30日間でIEの利用減少がはっきりと数字に表れている。

 この減少のきっかけは、MicrosoftがEU地域向け「Windows XP」「Windows Vista」「Windows 7」に新規追加した通称「ブラウザ選択画面」だ。これは、ユーザーがデフォルトWebブラウザとしてIEを設定している場合にだけ現れ、上位12種類までのWebブラウザの情報を紹介する。そのうち上位5種類のブラウザ、IE、米Mozillaの「Firefox」、米Googleの「Chrome」、ノルウェーOpera Softwareの「Opera」、米Appleの「Safari」は、目立つ場所にランダムな順番で表示される(関連記事:Microsoft、EU向け「ブラウザ選択画面」の表示バグを修正)。

 StatCounterによると、Windowsにブラウザ選択画面が追加されて以来フランスでIEの利用が2.5%減った。同じ期間にイタリアでは1.3%、英国では1%減ったという(関連記事:欧州向けWindowsにブラウザ選択画面、2月末から順次追加)。

 またWebブラウザ市場の負け組であるOperaは、EU全体における同社製Webブラウザのダウンロード数が2倍以上に増えたと発表した。イタリアやポルトガル、スペインなどでは実質的に3倍増となった。Mozillaも2010年第4週、EUで Firefoxのダウンロード数が増えたことを明らかにした。さらにMozillaは「ブラウザ選択画面が全EU加盟国の Windowsに行き渡ればダウンロード数はまだまだ伸びる」とみている。

 その一方で、ブラウザ選択画面の恩恵を得られないWebブラウザもある。ユーザーが極めて少ないため上位5種に入らない「Avant」「Flock」「Sleipnir」のような無名Webブラウザのベンダーは、「ブラウザ選択画面内の表示位置が現在のままだと新規ユーザーの獲得につながらない」と不満を訴え、よりよい場所に表示されることを求めている(もっとも、ブラウザ選択画面に表示してもらえるだけでも感謝すべきだろう)。

 ブラウザ選択画面が表示される限り、その影響でIEの利用率は減り続ける。ただしブラウザ選択画面と関係なく、IEの利用率は数カ月前から減少する一方だった。なおMicrosoftは2010年3月第3週、次期Webブラウザ「IE 9」を披露したが、具体的なリリース時期の明言は避けた(関連記事:[MIX10]IE9のプレビュー版を公開、大幅な高速化と標準への準拠を強調)。筆者を含め大多数の人は、2010年中のIE9リリースは無理だとみている。