(イラスト・アニメーション:岸本 ムサシ)
今回の回答者: 岡田 隆 NTTドコモ 移動機開発部 技術戦略担当 担当部長 岡野 由樹 NTTドコモ 移動機開発部 技術戦略担当 |
ちょっと前の携帯電話機は,通話するときに伸ばして使うロッド・アンテナが付いていました。でも,今の携帯電話機に付いているロッド・アンテナのほとんどは,ワンセグ用のアンテナです。携帯電話機用のアンテナはどこにいってしまったのでしょうか。
現在販売している携帯電話機の多くはアンテナを内蔵しています。液晶画面部とキーボード部の接点であるヒンジ部やきょう体の上部・下部などに小型のアンテナ素子が入っているのです。地道なアンテナ開発とノウハウの蓄積で,内蔵できるようになりました。
アンテナ素子を小さくできた要因の一つに,携帯電話の方式がPDCからW-CDMAになり,利用する周波数帯が高くなったことが挙げられます。というのも,電波を受信するために必要なアンテナは,周波数帯が高ければ短くできる傾向にあるのです。アンテナの種類や構成にもよりますが,PDCで使われる800MHz帯で約8~9cm必要なのが,W-CDMAで使われる2GHz帯では約3~4cmの長さで済むのです。
しかし,それよりも大きな要因は,携帯電話機内部の基板をアンテナとして使う技術が開発されたことです。アンテナというのは,電波を受けたアンテナ素子に電流が生じることで機能しています。そこで,アンテナ素子に生じる電流だけでなく,携帯電話機全体に生じる電流を積極的に活用する方法を考え出したのです。こうすることでアンテナ素子自体を小さくできました。一般にスライド式携帯電話機よりも二つ折り式の携帯電話機のほうが表面積が広いので,この技術を使うと電波の送受信に有利な場合もあります。
最近はワンセグ機能を搭載した携帯電話機でも,ロッド・アンテナが付いていないものがあります。こういった機種では,基板をワンセグのアンテナ代わりに使っていることがあります。