ゲームやニュース、小説、SNS(Social Networking Service)機能などを提供する携帯電話向け総合ポータルサイト「モバゲータウン」(以下モバゲー)。いわずと知れた人気サイトである。モバゲーを運営するディー・エヌ・エーは2009年夏、『怪盗ロワイヤル』や『ホシツク』といった、いわゆる「ソーシャルゲーム」を追加したところ、それらのゲームは予想を上回る人気を集めた。

 モバゲーのページビュー(PV)は、2009年8月は前月比5.6%増であったが、ソーシャルゲームを追加した後は前月比14~36%増の状態が続き、2010年2月時点で517億7860万PV/月を記録した。

 人気サイトを支えるシステムとはいえ、これほどのアクセス増を見込んで作ってはいない。実際、モバゲーのシステム担当者に2009年9月以降の状況を聞いたところ、「綱渡りのようだった」(ディー・エヌ・エー システム統括本部 IT基盤部 部長 茂岩祐樹氏)という。システムを長期間止めてリソースを増強することは許されない。とはいえ、目の前ではアクセス増が続き、何もしなければシステムの限界に到達し、最悪の場合サービス停止になりかねない。2009年9月~2010年1月は、モバゲーのシステムは危機的な状況だったといってもいいだろう。

 システム担当者はこの状況をどうやって乗り越えたのか。当事者の一人であるディー・エヌ・エーの茂岩氏に、その様子と、そこから学んだことを寄稿してもらった。

 第1回「危機到来、作戦を練る」編は、アクセス増の状況を認識してから、それへの対策をまとめるまでの話。第2回「作戦準備」編は、現場担当者の目線で、具体的なシステム増強の準備をどのように行ったのかを取り上げている。そこでは、システム停止を最小限にするための現場の苦労をうかがい知ることができる。

 だが、それでも起こるのがアクシデントである。第3回「それでも起こったアクシデント」編では、予期せぬトラブルにどう対処したのかを、ドキュメンタリー風にお届けする。

 続く第4回と第5回は、今回の経験を踏まえ、システム担当者として学んだことをまとめてもらった。(日経SYSTEMS