手続き型の開発言語「COBOL」が誕生したのは、50年前の1960年4月のこと。英語に似た文法を持つこと、金額計算に向いていることなどから、多方面で利用されてきた。これまでに4回の規格改訂を受け、最新規格ではオブジェクト指向機能も備えた。今もシステム開発プロジェクトの2割弱で利用されるなど、第一線の開発言語である(COBOLコンソーシアム主催「COBOL誕生50周年記念セミナー」の詳細はこちら)。

COBOLは「Common Business Oriented Language」の略

図1●50年前に書かれた最初のCOBOL「COBOL-60」の仕様書の表紙
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図2●COBOL-60仕様書に記された謝辞
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 図1が、COBOLが2010年に50周年を迎える証拠である。最初のCOBOLである「COBOL-60」の仕様書だ。1960年4月の日付が確認できる。COBOLを「Common Business Oriented Language:共通事務処理用言語」の略としていることも分かる。

 COBOL-60仕様書の表紙を掲載するに当たり、当時の流儀にのっとり「謝辞(Acknowledgment)」を掲載する(図2)。COBOLコンソーシアム会長の高木渉氏によれば、COBOL85規格以前は、この謝辞を掲載すればCOBOL仕様書の複製が自由だったという。

 COBOL-60公開の前年、1959年5月にユーザーとコンピュータメーカーなどの代表約40人が米国防総省に集まり、事務処理用のプログラミング言語を作るための会合が開かれた。その場で、「CODASYL(The Conference on Data Systems Languages:コダシル、データシステム言語協議会)」という団体が設立され、同年11月にCOBOL言語仕様が開発された。これがCOBOL-60である。

 COBOL-60の開発に当たり、CODASYLが決定した方針は、「可能な限り記号的な(シンボリックな)表現をやめて、英語に近いプログラミング言語を作ろう」というものである。

 それまで、コンピュータの主な用途は科学技術計算だった。1956年に登場した最初の高水準言語「Fortran」は数式に似た記述法を採っている。COBOLは、“アンチFortran”として生まれたのである。その現れの一つが、数式ではなく英語の文章に似たコーディングをすること。10進数でデータを表現したり、帳票作成が容易といった特徴も、事務処理を意識した結果である。