携帯事業者から端末を引き離す
第三の意図は,携帯電話の新しい流通モデルを構築するというものだ。これまで米国や日本では,携帯電話事業者の管理の下,店頭で端末が販売されてきた。Nexus Oneの販売ではこのモデルを打ち崩す。
販売はWebに限定。端末購入時には,端末だけの購入も可能なほか,回線も複数事業者から選べるようにする(写真3)。2月12日時点でNexus Oneの回線事業者として選べるのは,米T-モバイルUSAだけだが,今後は米ベライゾン・ワイヤレスや英ボーダフォンなども選択可能になる見込みだ。
端末販売は世界中で実施する。「現在,テスト・マーケティングとして米国のほか,香港,シンガポール,英国で販売しているが,販売網を世界中に拡大したい」(グーグルのマリオ・ケイロス製品管理担当副社長)という。
端末販売の中心がグーグルに移動
グーグルのNexus One販売モデルは,ユーザーにとっては魅力的に映る。最先端の端末をいち早く購入できるうえ,回線の選択肢も増えるからだ。
ただし,携帯電話メーカーや携帯電話事業者にとっては今後の戦略に大きな影響が及びそうだ。まず,グーグルのWebサイト経由で販売できるということは,メーカーにとっては,通信事業者以外の販売チャネルが増えることになる。グーグルのチャネルに載せられれば,現地の通信事業者と交渉せずに,グローバルに販売できる。
半面,端末開発に対するグーグルの支配力が強くなるのは,避けられない。グーグルのチャネルで販売するには,グーグルとの連携が欠かせないからだ。グーグルとの関係が悪くなれば,最新バージョンのAndroidのソースコードを事前に入手できなくなる可能性もある。実際,Android普及団体のOHAに加入している企業と,OHAに加入していない企業では,半年程度ソースコードを入手するタイミングが違っており,最新のバージョンの搭載時期が異なる(図1)。
携帯電話事業者にとっては,携帯電話端末の調達交渉やサポート,端末の宣伝,端末の流通網の構築などをしなくても,回線を販売できるようになる。一方で,携帯電話事業者のメーカーへの影響力が弱まり,自社のサービスの搭載が難しくなっていく。回線品質やブランド力が決め手になっていくと思われる。