2010年1月5日,米グーグルが台湾HTCと開発した携帯電話「Nexus One」を同社のWebサイト経由で販売すると発表した(写真1写真2)。Nexus Oneを評価したある携帯電話開発者は「動作はきびきびしている。NTTドコモが販売しているHT-03Aに比べると,端末としての完成度は飛躍的に向上した」と目を見張る。

写真1●米国で行われた米グーグルの携帯電話端末「Nexus One」の発表会
写真1●米国で行われた米グーグルの携帯電話端末「Nexus One」の発表会
写真2●2010年1月からWebサイトで販売が始まったNexus One
写真2●2010年1月からWebサイトで販売が始まったNexus One

 Nexus Oneはグーグルが「スーパーフォン」(アンディ・ルビン エンジニアリング担当副社長)と呼ぶほど,リッチなマシンだ。Androidの最新バージョンである2.1を搭載。米クアルコムの1GHz動作の携帯電話向けプロセッサ「Snapdragon」を搭載し,WVGA(800×480ドット)の有機ELディスプレイを持つ。さらにGPSやBluetooth,500万画素のカメラなど高機能なスマートフォンに求められる機能はすべて搭載している。

 Nexus Oneが注目されるのはグーグル自らが打ち出した端末だからというだけではない。これまでの携帯電話端末の流通モデルを一変させる可能性を秘めていることも理由の一つだ。

iPhone対抗を明確に打ち出す

 Nexus Oneをグーグル自らが開発し,販売する背景には大きく三つの意図があると見られる。第一がスマートフォン市場で独走するiPhoneへの対抗,第二がAndroidフォンのリファレンス作り,第三が新しい携帯販売モデルの構築だ。

 まず第一のポイントを見てみる。iPhoneは米アップルがOSと端末を一体で開発しているため,開発者の意図通りの端末が素早く投入され,それがユーザーに受け入れられるという好循環を生んでいる。ところが,AndroidはOS開発と端末メーカーが分離したモデルなので,OS開発者が意図した通りの端末が作られない。グーグルが主導で端末を開発することで,これを打破しようというわけだ。

 こうして作られた端末はiPhoneをかなり意識した作りになっている。全面タッチパネルを搭載。大きさではNexus Oneが119.0×60.2×11.9mmであるのに対し,iPhone 3GSは115.5×62.1×12.3mmである。重さもNexus Oneが134.2gであるのに対して,iPhone 3GSが135gとほぼ同じだ。

 機能の面でも2月2日に公開されたアップデートでは,iPhone同様のマルチタッチがサポートされた。前出のAndroid端末開発者は「Nexus Oneに搭載されているAndroid 2.1にはiPhone並みに使い勝手を向上させるための改良が随所に見られる」という。

グーグル流のAndroidを規定

 グーグルがNexus Oneを出した第二の意図は,Androidフォンの分裂を回避するというものだ。Androidは端末開発の自由度が高いため,スマートフォンであってもその形状や使い勝手が多様になる。あまりにも差異があるとアプリケーション開発者が混乱する。分裂を起こして勢いを削がないように“グーグルが考えるスマートフォンの形”を見せようとしているのだ。

 Nexus Oneは最新のAndroidを搭載した端末だ。グーグルは今後も最新のOSを提供する姿勢を見せている。新しいアプリケーションを作る開発者はNexus Oneをリファレンスとしてアプリケーションを開発する。そうしてNexus Oneをリファレンスとしたアプリケーションが流通するようになれば,端末メーカー側もこれらのアプリケーションが動くように端末を設計しなければならなくなる。

 グーグルはNexus Oneの発表会で「タッチパネルの端末だけではなく,QWERTYキーボード・タイプなど様々な形態の端末を提供したい」としており,Nexus Oneはシリーズ化されるもようだ。同時に「今回の販売チャネルで同じような端末を氾濫させるつもりはない」とし,狙いがリファレンス・モデルの提供であることを認めている。