収益性が高いアプリ販売モデルを模索

 アプリ開発者に十分な収益をもたらす土壌を作り上げようという思いもある。Androidの普及拡大を目指すには,魅力的なアプリを豊富にそろえることが不可欠だからだ。

 アプリ配信で先行するiPhoneが世界で2009年末の時点で約10万本であるのに対して,Androidは約2万本と数の上ではまだ少ない。しかも,Android向けアプリは有料アプリよりも無料アプリの比率が高い。「iPhone向けアプリは約7割が有料で約3割が無料と言われるが,Android向けアプリでは,その比率が逆になる」(日本Androidの会 会長を務める早稲田大学大学院の丸山不二夫客員教授)。普及している端末の数がまだ少ないことから「Android向けアプリの開発者は個人プログラマがほとんどで,企業の参入が進んでいなかった」(ソフト販売コンサルタント)ことが理由の一つである。

 一方,有料アプリの収益性はiPhone向けでさえ高くない。アプリの価格競争が進んでいるほか,ほとんどが購入時にだけ代金を支払う売り切り型で定期的な収益を獲得しづらいからだ。アプリ内課金という仕組みを使えば定期的に利用料を得ることも可能だが,ユーザー管理のために自前でサーバーを運用する必要があるなど,開発者にとって負担が大きかった。そこで,事業者が独自のマーケットを立ち上げ,Android Marketとは違った方法でアプリやサービスの料金をユーザーから回収する。従来のiモードやEZwebのように「月額課金の設定も考えていく」(KDDIの重野部長)。

Android後は端末で差異化できなくなる
重野 卓
重野 卓
KDDI コンシューマ商品 統括本部 オープンプラットフォーム部長

 我々の調査で,日本では携帯電話を持ちながら,スマートフォンを2台目の端末として使っている比率が高いことが分かった。それは,従来のスマートフォンの機能に不足を感じているからにほかならない。しかも2台の端末を所有できるユーザーは限られる。

 そこでどんな機能を追加すれば1台目として使ってもらえるかを考え,社会インフラ的に使われている機能が必要だという結論に達した。初夏に投入する端末では,その機能を実装する。ただし,機能の詳細はまだ公開できない。

 社内では,Android端末を他社に先駆けて出すべきかどうかという議論もした。海外メーカーの製品をそのまま持ってくれば,すぐに出すことはできたが,ユーザーが求める端末を出すことを優先すべきと判断した。コンシューマ向けの製品だが,企業ユーザーの利用も期待している。

オープン化で端末の差異化は困難に

 オープン・プラットフォームであるAndroidが浸透すれば,いずれは端末だけでは差異化できなくなるだろう。それに備えて通信事業者は発想を柔軟にするべきだ。何も,土管屋になって通信機能だけを提供すればいいというわけではない。一部をオープンにして外部企業に任せつつ,通信事業者が持つ各種サービスや課金システムをどう生かすかを考える必要がある。

 その取り組みの一環として,KDDIではKDDIマーケット(仮称)を立ち上げる。Android Marketよりも日本のユーザーが使いやすい形でアプリを紹介したい。開発者が参入しやすいように,将来はKDDIマーケットにアプリを一度登録すればAndroid Marketでも同時に配信できる仕組みを整える。月額課金など,ソフトウエア開発者が利用しやすい課金体系を導入する必要もあるだろう。

 音楽配信サービスの「LISMO!」など,既存の携帯電話に提供しているサービスで,ユーザーに受け入れられるものは提供していきたい。