過去のソフト開発のタブーを打ち破る
「すべてのアプリは平等」をうたうAndroid端末では,これまでの携帯電話ではタブーとされてきた,アプリケーションからアドレス帳へのアクセスや,ほかのアプリケーションとの連動が可能になる。いわゆるマッシュアップと呼ばれる開発手法で,ソフトウエア開発者は既存のサービスをあたかも部品のように組み合わせて新しいサービスを生み出せる。
あるソフトウエア技術者は,「グーグルの音声検索サービスを応用したAndroid端末向けアプリケーションを1人で開発した。何から何まで自前で用意する必要があった従来の環境では,全く考えられなかったことだ」という。
オンライン上のアプリケーション市場「Android Market」への登録も,無料でしかも好きなタイミングで行える。Android Marketに競合する配信サイトを作ることさえ制約がない。
さらに,Androidはスマートフォン以外の機器にも搭載できる。「Gmail」や「Google Maps」などグーグルのサービスを利用しないのであれば,どのメーカーもだれの許可を得ることもなく自由に搭載機を開発し販売できる。
実際,スマートフォン以外の機器を開発する企業も,世界中のソフトウエア開発者が持つ圧倒的なパワーに気付き始めた。その一つが自動車業界だ。2009年後半には,Androidを採用したカーナビが登場し始めた。
ライフ・スタイルを大きく変える可能性秘める
テレビや録画機などの家電製品も,Android搭載によってネット接続機能が付与されることで大きく変わりそうだ。メーカーやサービス事業者の発想の枠を超えたサービスが,外部から投入されることは間違いない。
例えば,「テレビの視聴を変えた大発明」(iPhoneなど最新のIT事情に詳しいジャーナリストの林信行氏)と評される新サービス「ピーチク」にその萌芽を見ることができる。ピーチクは,「Twitter」と連携したテレビ・ラジオの案内サービスである。Twitterのつぶやきを基に最新のつぶやきを一覧表示,ユーザーはそのつぶやき一覧を見ると,どのチャンネルが話題になっているかを知ることができる(図3)。
現在はピーチクを見た人がテレビやラジオの視聴を判断しているが,この仕組みを応用すれば,「Twitterのつぶやきを基にチャンネル変更するテレビ」,「つぶやきが多い番組を自動録画する録画機」などを開発できる。
Android搭載機が広がれば,異なる機器を連係させた大掛かりなサービスも多数登場する可能性がある。ただし,同一社内でも事業部が細分化されている現状では,強力なリーダーシップが無い限り,社内横断的なアプリやサービスの開発の動きは生まれにくい。ここでも,組織のしがらみが少ないサード・パーティの自由な発想が生かされる可能性が高い。