フレッツ系VPNサービスは,地域IP網(フレッツ網)だけで提供される従来からのサービスと,NGN(次世代ネットワーク)をベースとした新しいサービスの二つに大きく分けられる。

 フレッツ網だけの従来サービスとしては,(1)フレッツ・グループアクセス(NTT西日本はフレッツ・グループ),(2)フレッツ・アクセスポート,(3)フレッツ・オフィス/フレッツ・オフィス ワイド──の3種類がある(図1)。またNGNを中心とした新サービスとしては,(4)フレッツ・VPNワイド,(5)フレッツ・VPNゲート──の二つがある(図2)。

図1●従来型のフレッツ系VPNサービス<br>NTT東日本の例。各拠点をメッシュ状に接続するVPNサービス「フレッツ・グループアクセス」と,センター拠点を中心にスター状のセンター・エンド型のVPNを構築するフレッツ・アクセスポート/フレッツ・オフィス/フレッツ・オフィス ワイドに大別できる。
図1●従来型のフレッツ系VPNサービス
NTT東日本の例。各拠点をメッシュ状に接続するVPNサービス「フレッツ・グループアクセス」と,センター拠点を中心にスター状のセンター・エンド型のVPNを構築するフレッツ・アクセスポート/フレッツ・オフィス/フレッツ・オフィス ワイドに大別できる。
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図2●NGNベースのフレッツVPNサービス<br>NGNをベースにフレッツ・アクセスグループの後継として作られたVPNサービスが「フレッツ・VPNワイド」,フレッツ・アクセスポートやフレッツ・オフィス/フレッツ・オフィス ワイドの後継となるのが「フレッツ・VPNゲート」である。
図2●NGNベースのフレッツVPNサービス
NGNをベースにフレッツ・アクセスグループの後継として作られたVPNサービスが「フレッツ・VPNワイド」,フレッツ・アクセスポートやフレッツ・オフィス/フレッツ・オフィス ワイドの後継となるのが「フレッツ・VPNゲート」である。
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 これらのうちの(2),(3),(5)は,一つのセンター拠点と各拠点がそれぞれ一対一で接続し,スター状の構成となるセンター・エンド型VPNサービスである。(2)と(3)の後継サービスが(5)となる。これらのサービスは,自宅から社内ネットワークへのアクセスとインターネット・アクセスを使い分けたり,自宅から職場へのリモート・アクセス環境を構築したりするのに利用できる。

 一方,(1)のフレッツ・グループアクセスと(4)のフレッツ・VPNワイドは,拠点間でIP通信を実現するフルメッシュ型のVPNサービスである。(4)は(1)の後継という位置付けになる。一般的に拠点間接続による企業ネットワークを構築する場合はこちらのサービスを利用するので,以降では(1)と(4)を中心に見ていくことにする。

拠点数の上限を大幅に増やした新サービス

 フレッツ・グループアクセスとフレッツ・VPNワイドは,「拠点間をメッシュ状に接続し,IP通信を実現するVPNサービス」という点は同じである。また,ベストエフォート型のサービスであり,オプションでもQoS(quality of service)機能が提供されない点も共通している。

 大きな違いがあるのはVPNに収容可能な拠点数だ。フレッツ・グループアクセスでは拠点数の上限によってプランが分かれる。拠点数の上限が10のプランは「フレッツ・グループアクセス ライト」,上限が30のプランは「フレッツ・グループアクセス プロ」と呼ばれる。もし30拠点以上を接続したい場合には,複数のVPNを設け,それらを束ねる手間が必要となる。

 これに対し,フレッツ・VPNワイドでは,拠点数の上限がそれぞれ10,30,100,300,1000という5種類のプランを用意することで,上限を大幅に拡大した。拠点数が30より多い場合には,フレッツ・VPNワイドを選ぶことになる。

 料金設定にも大きな違いがある。フレッツ・グループアクセスの場合,プランによって料金設定が大きく異なる。フレッツ・グループアクセス ライトでは,1拠点の月額利用料は735円とかなりの低料金となっており,割安感があった。ただし,同メニューの新規加入受け付けは2009年3月に終了しており,新たに申し込むことはできない。これに対し,まだ新規申し込みが可能であるフレッツ・グループアクセス プロは4750円と割高になっている。

 フレッツ・VPNワイドでは,全拠点の中から1拠点だけを選び,「VPN管理者拠点」に指定する。VPN管理者拠点だけは上位のプランほど月額料金が上がるが,その他の一般的な拠点である「VPN参加者拠点」はプランにかかわらず一律1890円となっている。この料金はフレッツ・グループアクセス プロと比べるとかなり低いので,すぐに移行する価値はあるだろう。一方,フレッツ・グループアクセス ライトはフレッツ・VPNワイドより割安な料金設定なので,移行するのは得策ではない。