業務ロジックや画面といった機能要求が明確だからと安心してはいけない。性能や運用性といった非機能要求を明らかにできなければ“道半ば” である。その不備は7割に上る。意識を高め,スキルを磨くことが急務だ。

 「この応答速度では遅い」「バッチではなくオンラインでないと業務に支障を来たす」──。金属チタン製造大手の東邦チタニウムは2008年5月,生産管理システムを稼働させた。ところが2年1カ月を要した開発プロジェクトでは,冒頭のような要求仕様の変更が相次いだ。そのため当初洗い出した要求を見直し,一度作ったプログラムの改修を余儀なくされた。

 変更になったのは,例えばこんな要求である(図1)。当初,268の機能について,応答時間を「一律3秒以内,長くても5秒」としていた。しかしユーザー・テストの段階で,参照系の機能は5秒では遅いことが判明した。更新系機能の場合は,その画面のボタンをクリックすると一連の業務が終わることが多い。それに対して参照系の場合,検索結果を見てからさらに次の操作をする。だから,利用者は参照系機能の応答を待つことになり,更新系機能と同じ応答時間でも遅いと感じてしまった。そこで参照系機能については更新系より短い応答時間に変更。要求を満たすためにプログラムも修正した。

図1●開発途中で変更になった要求
図1●開発途中で変更になった要求
東邦チタニウムは,生産管理システムの開発途中で当初想定した応答時間を機能ごとに設定し直したり,バッチ処理をオンライン処理に変更したりした
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 また,受注データを1時間に1回,生産管理システムにバッチ処理で取り込むようにしていた。ところがこれも,最新のデータではない上に,取り込みが完了しないと業務を始められない仕様が問題になった。そのため生産管理システム側で受注データをそのつど取り込めるよう,オンライン・プログラムを新たに開発することになった。