仮にあなたが1ページぐらい、文字数にして数百~1000字程度の文書を渡されてそれを読んだとしましょう。そして、

ふむふむ、それほど難しい内容でもないし、うん、だいたいわかった。

と感じたとしたら、このときあなたはその文書に書かれている内容の何割ぐらいを理解していると思いますか?

■だいたいわかった、と思う文書の読み取り精度はせいぜい5割

 「だいたいわかった」と感じているわけですから、7割・8割ぐらい、と思うかもしれませんが、現実にはそんなにいかないことが多いようです。私の感触ではせいぜい5割、もしかしたら3割ぐらい? かもしれません。

 実はそれで失敗したこともありました。ある会社のエンジニア向けの「図解」研修で、20行ぐらいの課題テキストを与えて「この内容を図解してきてください」という宿題を出した時のことです。その課題テキストにはおおまかに10項目の情報が書かれていたので、それを全部とは言わないまでも、7項目ぐらいは図解に含める形で書いてきて欲しい、と、出題した私は期待していました。

 ところが、実際に戻ってきた解答を見てみると、7項目の情報が入っているものはごくわずか。大半は3~4項目程度で、しかもそのうちの1つは間違っている、という例が続出したのです。

 それは出題した私にとってかなりショッキングな出来事でした。

 この事件で私は「問題は図解の技術ではない。読解力だ」と認識するようになりました。

 「図解の技術」を知らないのなら、それを教えればできるようになるでしょう。

 しかし、そもそも元の文書を正しく読めていないのでは、それを図解したところで間違った図を書くことになるだけです。何よりも重要なのは読解力を向上させることであり、マルや四角や矢印の使い方よりも、「文章の正確な読み取り」にすべての労力を注がなければいけません。この事件を契機にそう認識した私はそれ以後、研修プログラムの構成をガラリと変え、研修名称そのものも「読解力と図解力」と「読解力」を前面に出すように作り変えて現在に至っています。

 では、「読解力を向上させる」ための良い方法はあるのでしょうか? それがあるならぜひ知りたいところです。そして、その方法の1つが、「目についた単語を適当に一組取り出して、順番をつけてみる」というものです。