クラウドコンピューティングが話題だが、議論の中心はクラウドをどう利用するか、既存のサーバー環境をどう移行するかにある。サイロ化した既存環境を見直すことで、膨らむITコストを削減できるとの期待があるからだ。しかし、そこで見落としがちなのが、クライアント環境だ。

 PCの利用状況は既に、「一人1台」以上が特別ではなくなった。一方で、ウイルス攻撃や情報漏洩など、セキュリティ対策の重要性は高まる一方だ。サーバー環境のクラウド化を進めようとするならば、“これからのクライアント環境”を併せて考えることで、より一層の効率的なマネジメントやコスト削減が期待できるだろう。以下では、クライアント環境を再考するためのヒントを与えてくれる連載を中心に紹介する。

創造的に働くためには、機動力が必要だ

 クライアント環境を、ITの視点から見直す前に重要なことがある。PCを利用して仕事をする我々の働き方である。経済不況が長引く一方で、組織としての期待は、新事業や新製品の企画や事業構造の転換など、「創造的な仕事(クリエイティブワーク)」に移っている。そんな、クリエイティブワークを推進するためには、「いつでも、どこでも、誰とでもコラボレーションができる」仕組みが必要だ。

 こうしたワークスタイルを実現する具体策の一つが、ノートPCを自由に持ち歩け、しかも情報の安全を守る仕組みだろう。そんな情報システムの構築に10年以上取り組んできた、コンサルティング会社シグマクシスの戸田輝信パートナーが、その実現方法をオンラインで講義し、そこに寄せられた疑問・意見に回答している。その仕組みは、まさにクラウド化なのである。

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[第1講]遊牧型ワークスタイルの勧め
[第2講]発想を転換、「社内ネットを用意せず」
[第3講]徹底した安全対策を施す
[第4講]サーバーアクセスの前に3重の認証
[第5講]コラボレーションに取り組もう

PCを“安心・安全”に利用するための負担は大きい

 戸田パートナーが提示するクライアント環境を一気に実現することは難しいかもしれない。特に、内部統制や情報漏洩対策を強化しなければならない現状では、例えばノートPCの持ち出しを禁止するといった運用による施策を採らざるを得ないかもしれない。

 しかし、ノートPCを安全に社外に持ち出すためのテクノロジは進展している。ノートPCが持つ携帯性を最大限に生かすことが、新たなワークスタイルの実現にもつながるだろう。利用者の自由度を高めながら、セキュリティの強化やコスト削減を実現する管理手法を確立するためには、PCを1台1台見るのではなく、プラットフォームとしてとらえることが重要だ。次の二つの特集では、テクノロジ動向と先進企業における取り組みを紹介している。

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プラットフォーム化するPC~利用者に負担を掛けない~
ノートPCの持ち出し禁止問題を考える

ケータイやスマートフォンも視野に

 クラウド時代のクライアント環境を考えようとすれば、その対象は、いわゆるPCにとどまらない。高機能化が進む携帯電話や、米アップルのiPhone、米グーグルのAndroidや米マイクロソフトのWindows Mobile(次期版はWindows Phone7)を搭載するスマートフォンなど、選択肢は多様化している。これらPC以外のクライアントをどう活用するかも、クラウド時代には重要な課題だ。

 八子・モバイルクラウド研究所では、デロイト トーマツ コンサルティングの八子知礼 通信・メディア・ハイテク領域担当シニアマネジャーが、クラウド時代の企業の情報システムについて、モバイルの観点から考察する。

 能地・UCライフハック研究所は、日本アバイアの能地 將博ソリューションマーケティング シニアマネージャーが、仕事も生活もうまくこなすライフハッカーを目指し、モバイルなど通信環境をどう利用するかについて、筆者自らの体験談を交え考察している。

 特集「モバイルが企業のリアルタイム化を加速」は、よりリアルタイムな情報共有を可能にするモバイル環境を実現するための、技術スキルの解説である。

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