エイチ・ツー・オー リテイリングは傘下の阪急百貨店と阪神百貨店のシステム統合を完了、昨年11月に稼働を開始した。折しも阪急は長期経営計画に基づく全社システム基盤の構築を進めており、阪神との経営統合が降ってわいたのはその矢先だった。しかし先進的な構想による基盤作りを先行していたおかげでシステム設計の手間を軽減、実質1年で統合プロジェクトを乗り切った。<日経コンピュータ2009年3月18日号掲載>

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 百貨店の販売不振は深刻さを増すばかりだ。2009年1月の全国百貨店の売上高は前年同月比9.1%減の6131億円で、11カ月連続の前年割れを記録した(日本百貨店協会調べ)。2月も大手5社の売上高が前年同月比12~15%減で推移している。

 逆風下にあって、百貨店各社は生き残りに向けた再編を加速させている。すでに大手は売上高1兆円規模の4大グループに集約された(図1)。

図1●深刻な消費低迷を受けて、大手百貨店の合従連衡は加速している
図1●深刻な消費低迷を受けて、大手百貨店の合従連衡は加速している
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 この一連の再編劇で業界首位グループに躍進することになったのがエイチ・ツー・オー(H2O) リテイリングだ。同社は2008年11月、阪急百貨店と阪神百貨店のシステム統合を終えたばかり。その前月には高島屋と2011年までに経営統合することを発表した。こちらのシステム統合はまだ具体像は見えていないが、2009年前半にも検討を開始するとみられる。

全社のシステム基盤があればこそ

 H2Oの情報化戦略は、「ある日突然に持ち上がる経営の変化にも、即座に対応できるIT基盤を実現すること」(森忠嗣取締役執行役員 経営企画室長)である。

 実はこれは、阪急百貨店時代の2004年に策定した、10年先を見越した経営計画「GP10」に基づいている。14年度の売上高目標として、当時に倍する7000億~8000億円を設定。ブランド強化や出店攻勢を図る姿勢を打ち出した(図2)。もちろん阪神百貨店との統合など念頭にないころだ。

図2●H2O のシステム統合戦略
図2●H2O のシステム統合戦略
経営統合を含めた長期事業計画を支えられるシステム基盤作りを目指した
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 GP10における情報化戦略の土台は、ブレードサーバーと仮想化ソフト、SANといった先進技術を駆使して、主要な店舗に分散したサーバーとストレージを集約することにあった。つまり、ネットワーク構造も簡素化して店舗網を拡張しやすくしたわけだ。その目標は“伸縮自在の柔軟なシステム基盤”であった。