チタン製造大手の東邦チタニウムは、要件を固めきれないが納期は厳守という難題プロジェクトをアジャイル開発手法を使って乗り切った。同社にとって初めて挑む新しい開発手法だったが、ユーザー部門のキーマンをプロジェクトに固定させたり、プロジェクトの途中でもアジャイル開発向きでない開発者を交代させるなどして完遂した。<日経コンピュータ2009年1月15日号掲載>

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 「要件を固めきれないうえに納期厳守が絶対条件だった。仕様変更を受け入れながら短期にシステムを開発できるアジャイル開発手法を選んだからこそ成功できた。ウォータフォール型開発手法では間違いなく失敗しただろう」。東邦チタニウムでプロジェクト責任者を務めた加古幸博 常務執行役員 業務本部長兼チタン事業本部審議役兼社長室長は、難題プロジェクトをこう振り返る。

 2年間と3億円を投じて完成させたのが主力商品であるチタンインゴットの生産管理システムだ(図1)。既存の販売や検査といったシステムとデータ連携しながら、受注から出荷までの情報を一元管理する。

図1●東邦チタニウムが稼働させたインゴット生産管理システム
図1●東邦チタニウムが稼働させたインゴット生産管理システム
生産管理業務を統括する。マスターも一新した
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 システム形態はクライアント/サーバー・システム。ハードウエアは日立製作所製のWindowsサーバー4台で、アプリケーションサーバーとデータベースサーバーをそれぞれ冗長化して構成した。アプリケーションはVisual Basic .NETで開発し、フレームワークは保守の効率化を見越して東邦チタニウムが標準採用しているNTTデータCCS製の「dot EZ」を使った。

 クライアントは約70台で、新工場である八幡工場(福岡県)、本社のある茅ヶ崎工場(神奈川県)、日立工場(茨城県)の三工場に配置してある。サーバーとのやり取りには画面転送型のシンクライアントソフトを使っている。

 開発プロジェクトは合計で300強の画面と帳票、システムの利用シーンであるユースケースを約270個開発し、2008年5月に本稼働させた。